「トラブル・ピーチ」閉店

by Shogo

今年は色々なことがあって東京滞在の時間が減っている。そんなことから、下北沢の「トラブル・ピーチ」が閉店していることを9月になってやっと知った。

散歩の歩き慣れた道を歩いてゆくと、あの壊れそうな古ぼけた建物ごとなくなって更地になっていた。その場で検索してみると、2024年5月に閉店していた。

最近でこそ、あまり行っていなかったが、一時は飲み会の帰りに家に帰る前に寄って帰るというのが定番という時期もあった。なぜか、あの暗い狭い空間が心地よかった。かかっている音楽が、いつも好みということもあっただろう。

店内は、壁には昔のロックバンドのポスターが貼られ、レコードジャケットがびっしりと収納されていた。天井からはスピーカーが吊り下げられていた。照明は暗く、内装も他の客もあまりよく見えない。

初めて足を踏み入れたのは、多分、20世紀の終わりか21世になった頃。70年代、80年代のオールドロックが流れる店内は、いつもどこかノスタルジックな空気に包まれていた。21世紀ではなく、間違いなく昭和がそこにあった。ジミ・ヘンドリックスのギターが唸り、レッド・ツェッペリンの重厚なリズムが心を揺さぶる。時には、デビッド・ボーイの世界に迷い込み、ピンク・フロイドの壮大な音の宇宙に身を委ねることもあった。

いつも酔っ払って何軒目かにいくので、いつもより陽気で知らない人と話したりもした。酔っ払いが、少しだけ、また酔っ払いになって、それで、家まで歩いて帰っていた。

下北沢の街は日々変化し、新しい店が生まれ、古い店が姿を消していく。それは、人も同じだ。親しい人の死を経験した今年は、特にそう思う。トラブルピーチもまた、時代の流れの中で静かに幕を閉じた。しかし、あの場所で過ごした時間、そして音楽は、これからも心の中で生き続けるだろう。

昔の踏切のそばの「Trouble Peach」という赤いネオンのサインが見られないのは寂しいものだ。

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