カナダ政府は、TikTokのカナダ国内事業の解散を命じた。これは、TikTokとその親会社であるByteDanceが国家安全保障上のリスクをもたらすという懸念に基づく措置だそうだ。
カナダのイノベーション・科学・産業大臣は声明で、「政府は、TikTok Technology Canada, Inc.の設立を通じて、ByteDance Ltd.のカナダにおける事業に関連する特定の国家安全保障上のリスクに対処するための措置を講じている」と述べた。
今回のTikTok禁止措置は、カナダの諜報機関による「多段階の国家安全保障審査プロセス」を経て決定されたと報じられている。カナダ政府は以前から、政府職員が使用する公用端末でのTikTokの使用を禁止していた。
アメリカでも同様の動きがあり、数ヶ月前にTikTokを禁止する可能性のある法律が可決されている。アメリカ議会もまた、国家安全保障上の懸念と、TikTokの中国政府とのつながりを問題視してきた。TikTokは、この法律に対して法的措置で対抗している。
TikTokの広報担当者は、カナダ政府の命令に対して異議を申し立てる声明を発表した。声明では、「TikTokのカナダオフィスを閉鎖し、数百もの地元雇用を破壊することは、誰の利益にもなりません。今日の閉鎖命令はまさにそれを実行するものです」と述べ、裁判でこの命令に異議を唱える意向を示した。
TikTokのリスク
TikTokは、ユーザーの個人情報や行動データへのアクセス権を持つ中国企業によって運営されている。中国の法律では、中国国内国外を問わず、全ての企業・個人は政府の命令に従わなければならない。そのため、政府が要請すればユーザーデータを政府当局と共有することが義務付けられているため、TikTokのデータが中国政府に渡り、監視やプロパガンダ に利用される可能性が懸念されている。
また、TikTokのアルゴリズムは、ユーザーの興味や関心に基づいてパーソナライズされたコンテンツを表示するように設計されている。しかし、このアルゴリズムが、偏った情報や誤った情報を含むコンテンツを表示する可能性も指摘されている。つまり、中国政府による情報操作の可能性を否定できないのが現在の状況だ。
カナダ政府とTikTokの今後の動向に注目が集まる。TikTokは、裁判でカナダ政府の命令に異議を唱えるが、どう見てもTikTokに勝ち目はない。また、カナダ政府は、TikTokのリスクに対処するための、さらなる措置を講じる可能性もある。
すでに安全保障やプライバシーリスクのために、多くの国では政府所有のデバイスへのTikTokのインストールは禁止されている。また、インドは、TikTokだけでなく、全ての中国企業のアプリを全面的に禁止している。これは、アプリのリスクだけではなく、長年にわたるインドと中国の対立関係もあるからだろう。
日本の対応は現時点ではやや緩い。閣僚や副大臣、政務官に支給されるスマートフォンには、TikTokがインストールされていないそうだが、それ以外の政府所有のデバイスへのTikTokのインストールは禁止されていない。
TikTokをめぐる議論は、国家安全保障と個人の自由とのバランスという重要な問題を提起している。前政権時には、TikTokのアメリカ事業をアメリカの会社に譲渡するか、全面的に禁止するかを迫ったトランプ大統領が、今後どのように反応するか注目される。また、日本も、どのように対応するのだろうか。