OpenAIが、博士号レベルのAIエージェントを月額2万ドルで提供する計画を立てているというニュースには驚いた。この高額なサービスは、コーディングや高度な研究など、専門性の高いタスクを自動化することを目的としているにしても、その価格設定と提供される価値については、少し疑問も感じる。というのは、多分コーディングについては、問題ないにせよ、その他の用途ではハルシネーションや誤認も多いからだ。
報道によると、OpenAIはAIエージェントを3つの価格帯で提供する予定のようだ。
- 月額2,000ドル: 知識労働者向けの基本的なAIアシスタント。
- 月額10,000ドル: 開発者やエンジニア向けの高度なコーディングエージェント。
- 月額20,000ドル: 博士号レベルの研究を支援する最上位のAIエージェント。
この階層構造は、顧客のニーズと予算に応じて柔軟な選択肢を提供するとされている。しかし、特に最上位の2万ドルという価格は、多くの企業にとって大きな投資だ。日本円で月額300万円、年俸3,600万円だ。
将来はともかく、現時点で経済合理性があるのだろうか。たしかに、博士号レベルの研究を自動化できるAIエージェントは、研究開発のスピードを大幅に向上させる可能性があり、高度な専門性と効率性があるのであれが、経済合理性があるだろう。。特に、現時点でも複雑なコーディングタスクを高速かつ正確に実行できるエージェントは、ソフトウェア開発の生産性を飛躍的に高めるにかもしれない。
しかし、それ以外では、高度なセールスリードの選別や分析を行うということだが、営業効率を大幅に向上させ、収益増加に貢献できるのだろうか。
人件費と比較するとAIエージェントが優秀なら経済合理性があるだろう。博士号を持つ研究者や高度なスキルを持つエンジニアを雇用する場合、年間数千万円以上の人件費がかかることが一般的だ。だから、AIエージェントがこれらの専門家の代替となり、より低いコストで同様の成果を上げられるのであれば、合理性は十分にある。しかも、週に7日間、24時間働くことも可能だ。だが、これも、そのアウトプットが信頼に値するならということが前提だ。
OpenAIは、このエージェントが長期的な収益の20~25%を占めると予測しており、従来の月額200ドル程度のサブスクリプションモデルから大きく転換することを意図しているようだ。MicrosoftやSoftBankといった投資家から支援を受けている同社は、自動化に多額を投資する企業をターゲットにすることで、持続可能な収益源を確立しようとしているのだろう。
この月額2万ドルという高額なAIエージェントは、大企業向けソリューションへの一歩なのだろう。月額20ドルの一般ユーザーだけでは、巨額なAIサービスの運転資金や開発資金を賄えないのだろう。
しかし、仮に高額なAIエージェントが機能するのであれば、高学歴知的労働者市場へ影響が大きい。いわゆるホワイトカラーのAIエージェントによる置き換えが起こってゆくのだろう。しかも、それは、今日ではないが数年以内に実現することは確実だ。