電通の発表によると、2024年の日本の総広告費は7兆6730億円に達し、3年連続で過去最高を更新した 。これは、2023年の総広告費7兆3167億円 からの大幅な増加であり、好調な企業収益や旺盛な消費意欲、世界的なイベント開催、インバウンド需要の増加などがこの成長を支えていたと分析されている。
2024年広告費のポイント
- 総広告費は7兆6730億円 前年比104.9%増と大幅な伸びを記録し、過去最高を更新。
- インターネット広告費が牽引 インターネット広告費は3兆6517億円（前年比109.6%）と、総広告費の47.6%を占めるまでに成長 。
- マスコミ四媒体広告費は回復：新聞、雑誌、ラジオ、テレビのマスコミ四媒体広告費は2兆3363億円（前年比100.9%）と、3年ぶりに前年を上回った 。
- プロモーションメディア広告費も堅調 プロモーションメディア広告費は1兆6850億円（前年比101.0%）と、コロナ禍からの回復基調 。
2024年の広告費を媒体別に見てみると、インターネット広告の好調さが際立っている。
インターネット広告
動画広告需要の高まりが成長を牽引。特に、SNS上の縦型動画広告やコネクテッドTVの広告が大きく伸びている 。Sensor Towerの調査によると、Instagramは日本におけるデジタル広告の主要な出稿先となっており、2024年1月から10月までの広告費はFacebookの3倍に達した 。これは、Instagramの利用者層の拡大に加え、TikTokなどのショートムービープラットフォームの 人気 により、 縦型短尺動画コンテンツ が消費者に広く受け入れられていることが背景にある。
また、見逃し無料配信動画サービスのユーザー数・再生数増加に伴い、テレビメディア関連動画広告費も前年比147.4%増の653億円と高い成長率を示した 。さらに、物販系ECプラットフォーム広告費もオンライン通販の拡大により増加 。
マスコミ四媒体
テレビ地上波と衛星放送関連の広告費は前年比101.5%増と堅調に推移 。見逃し配信サービスTVerの普及が、テレビ広告の新たな可能性を広げている 。しかし、インターネット広告、特にネット動画広告費の著しい伸びを見ると 、視聴者のコンテンツ消費行動が変化し、広告主もそれに合わせて動画広告戦略をテレビからインターネットに変化させていることが分かる。
新聞広告費は前年比97.3%減と苦戦が続いている 。動画広告への予算シフトや広告単価の低下に加え 、新聞デジタルの広告収入も、紙媒体の発行部数減少の影響を受け、前年を下回った。
雑誌広告費は前年比101.4%増とプラス成長 。紙媒体の販売額は減少しているものの 、タイアップコンテンツのSNS上での二次展開や、広告主へのオリジナル企画コンテンツ提供など、新たな取り組みが奏功。
ラジオ広告費は前年比102.0%増と堅調に推移 。radikoを含むラジオデジタル広告への新規出稿数が増加しており、ポッドキャストをはじめとする音声メディアのデジタル展開が注目されている 。
プロモーションメディアは、人の動きがコロナ禍前に戻ったことで、屋外広告や交通広告、POP広告など、リアルな場面での広告が成長 。また、イベント・展示会・映像関連の広告も増加しており、特に映像関連はAIやDXの活用により、企業のマーケティング・プロモーション活動で需要が高まっている 。
広告費増加の要因
2024年の広告費増加は、様々な要因が複合的に作用した結果といえる。まず、実質GDP成長率が2%を超えるなど 、好調な経済状況が挙げられる。企業収益の増加は、広告予算の拡大に繋がった。
世界的なイベント開催も、広告費増加に貢献した。2024年には、パリ・オリンピックなどの国際的なスポーツイベントが開催され 、関連企業を中心に広告需要が喚起された。また、訪日外国人観光客数の増加も、観光・旅行業界を中心に広告需要を押し上げた。
技術革新も重要な要因だ。AIやDXの進展は、広告の効率化や効果測定を促進し、新たな広告手法を生み出している。スマホやコネクテッドTVの普及に伴い、動画広告市場が拡大していることも見逃せない。
主要国と比較した日本の広告費
アメリカは世界最大の広告市場であり、2024年の広告費は3887億ドル（約56兆円）に達した。デジタル広告が市場の8割を占め、テレビ・ラジオ広告も回復傾向にある。
中国は世界第2位の広告市場だが、パンデミック後の影響が続いている。広告業界の収益は減少傾向にある。とはいえ、2024年のインターネット広告収入は前年比33.4%増と依然として高い成長率を維持。
ドイツでは、2024年の屋外広告費が前年比12.7%増と大きく成長。しかし、デジタル広告への移行は遅れており、2024年のデジタル広告収入は全体の59%にとどまった。
イギリスはヨーロッパ最大の広告市場だ。2024年の広告費は366億ポンド（約6兆円）で、オンライン広告が市場を席巻し、2024年には全体の78.4%を占めた。
これらの国々と比較すると、日本の広告費は、かつての世界２位の広告市場から３位になったものの、堅調な成長を続けている。特に、インターネット広告の成長は目覚ましく、アメリカやイギリスに匹敵する水準に達している。この傾向は、当分続くものと見られる。
