Google のAnthropicへの出資

by Shogo

ニューヨーク・タイムズが入手した法廷文書により、Google が、 Anthropic の株式の14%を保有していることが明らかになった。

AnthropicのClaude3.7ソネットは、Perplexityで使えるので時々使っている。多分、文章作成能力では、Geminiより優れていると感じているからだ。そして、何よりAnthropicのロゴが好きだ。

だが、GoogleがAnthropicに出資しているとは全く知らなかった。これまで秘密裏に進められてきたようだ。しかし、Googleの独禁法裁判の法廷文書によって初めて明らかになった。出資文書によると、GoogleのAnthropicへの出資比率は15%を上限とし、議決権、取締役会への参加権、取締役会オブザーバーの権利は一切保有しないという制約が設けられている。

GoogleはAnthropicへの影響力を限定的にしているように見えるが、Anthropicに30億ドルを超える巨額の資金を投じている事実は、この投資の重要性を物語っている。さらに、Googleは2023年に合意した転換社債を通じて、2025年9月に7億5,000万ドルを追加投資する予定だそうだ。

なぜGoogleはAnthropicに出資するのか?

Googleが自社でも高度なAI技術を開発する一方で、AnthropicのようなAIスタートアップに投資を行う背景には、AI分野における熾烈な競争があるのだろう。Googleは、Anthropicへの出資を通じて、以下の戦略的なメリットを期待していると考えられる。

  • 技術ポートフォリオの多様化  自社開発に加えて、Anthropicの持つ独自のAI技術を取り込むことで、技術ポートフォリオを多様化し、リスク分散を図る。
  • 競争優位性の維持  Anthropicは、ChatGPTの競合となるチャットボット Claude を開発しており、GoogleはAnthropicの成長を支援することで、AIチャットボット市場における競争力を維持・強化する。
  • 将来の収益源の確保  Anthropicの企業価値は615億ドルと評価されており、Googleの出資は将来的に大きな収益をもたらす可能性がある。

今回の法廷文書公開は、巨大IT企業によるAIスタートアップへの投資が、規制当局の厳しい目に晒されている状況を浮き彫りにした。規制当局は、このような投資が、急速に進化するAI技術分野において、既存の企業に不当な優位性をもたらすのではないかと懸念しているようだ。Amazon や Microsoft も、Anthropicや OpenAI などの著名なAIスタートアップに投資しており、業界全体で同様の動きが加速している。

当初、司法省は、Googleが検索エンジンと競合する可能性のあるAI製品(Anthropicへの出資を含む)の売却を裁判所に命じることを提案していた。しかし、その後、司法省は提案を撤回し、Googleに対してAI投資を行う前に政府当局への通知義務を課す方針に転換したようだ。少し司法省の対応が軟化しているのかもしれない。

Anthropicとは?

Anthropicは、OpenAIの方針に異議を唱えた ダリオ・アモデイ氏 と ダニエラ・アモデイ氏 によって2021年に設立された。彼らは、AIの安全性に重点を置き、公共の利益と社会的貢献を目指す 公益企業 としてAnthropicを設立した。

Anthropicは、特定の巨大IT企業に支配されないよう、経営の独立性を重視しているという。Menlo Ventures などのベンチャーキャピタルから148億ドルを超える資金を調達しており、GoogleやAmazonからの出資も、その資金調達戦略の一環と言える。つまり、少額の出資を集めて、どこかに支配されない体制を作っているようだ。

また、Anthropicは、AIシステム構築のためにGoogleやAmazonから大量の計算能力を購入しており、投資企業からのチップやクラウドコンピューティングサービスの使用にも合意している。これは、GoogleやAmazonから調達した資金の一部が投資家に戻る構造になっていることを意味する。

技術的優位性

AnthropicのAI技術は、いくつかの重要な点で競合他社と差別化されている。

Anthropicは「人材の密度と独自のアルゴリズム」を活かし、競合他社よりも少ない計算リソースで最先端の技術を維持することを戦略としているようだ。この効率性は、AI開発における重要な競争優位性となっている。

また、モデルのカスタマイズと安全性が特徴だ。Anthropicの主力モデルであるClaudeは、企業が独自のニーズ、データ、ユースケースに合わせてAIモデルをカスタマイズできる点で差別化されている。特筆すべきは、Anthropicがクライアントの主要データソースとコアモデルを統合しながらも、そのデータでモデルをトレーニングしない点だ。これにより、データプライバシーと安全性を確保しつつ、カスタマイズされたAIソリューションを提供できる。

2024年10月、Anthropicは「computer use」と呼ばれるClaudeの拡張機能を発表した。この機能により、Claudeはカーソルの移動、ボタンのクリック、テキスト入力など、人間のようにコンピュータを使用できるようになった。この技術は、フォームの入力、スプレッドシートの確認、アプリケーションの起動など、従来は人間が行っていたタスクを自動化できる革新的な機能と言える。これは、AI技術が次の段階にする無事を意味する。

AI技術が社会に浸透していく中で、Anthropicのような企業が、安全性と倫理性を重視したAI開発を推進していくことが、ますます重要になると考えられる。その意味では、GoogleやAmazonから出資を受け入れながらも独立性を保つことが、今後も必要だし、Anthropicもそう考えているのだろう。

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