Googleが、ついに

by Shogo

Googleは、サードパーティ・クッキーに関しては、全くのオオカミ少年になっていた。5年以上にわたって、何度もサードパーティ・クッキーの廃止を延期して、段階的廃止計画を改定してきた。しかし、今週になって、サードパーティ・クッキーの廃止を完全に撤回し、現状維持することを発表した。ついに、やめることをやめるという結論を出したということだ。

Googleは、これまでは、サードパーティ・クッキーの廃止までは、Chromeブラウザにおいてユーザーがサードパーティ・クッキーによる追跡をオプトアウトできる「ユーザー選択」ボタンを今年中に導入する予定と発表していた。しかし、この計画は突如として中止された。Googleは、「Chromeにおけるサードパーティ・クッキー選択肢をユーザーに提供するという現状の設定方法を維持することを決定した」と述べ、新たなスタンドアロンの選択肢のボタンを導入しないことを明らかにした。

この背景には、いくつかの要因が考えられる。長年にわたるサードパーティ・クッキー廃止計画の遅延に加え、代替技術であるPrivacy Sandboxの開発における技術的な課題や、広告技術パートナーとの連携の難航があったという。特に、イギリスの競争・市場庁(CMA)や情報コミッショナー事務局(ICO)といった規制当局は、Privacy SandboxがGoogleの市場における優位性を不当に利用しないか、またユーザーのプライバシーを十分に保護しているかを厳しく監視してきたようだ。

CMAは、Googleがクッキーに関する対応をどのように表示するかがユーザーのクッキーへの対応に影響を与える可能性を懸念し、Googleとの協議を重ねてきたようだ。実際、CMAは声明の中でサードパーティ・クッキーの利点を支持しており、「GoogleのPrivacy Sandboxイニシアチブに関する我々の取り組みは、数十億ポンド規模の英国デジタル広告市場における競争保護に役立ってきた」と述べている。もしGoogleがChromeでサードパーティ・クッキーを削除した場合、競合他社がデジタル広告から不当に締め出される可能性があったため、CMAは介入し、2022年にGoogleから懸念事項に対処するとの約束を取り付けていた。

Googleの計画撤回は、広告業界に複雑な影響を与えるだろう。クッキーが現状維持されることで、従来のターゲティング広告や効果測定の手法は当面の間、維持されることになる。これは、クッキーの廃止に備えていた広告技術企業や広告主にとっては、一時的な安堵となるかもしれない。

一方で、Googleが多額の投資を行ってきたPrivacy Sandboxの意味は消えた。Ad Ageの報道によれば、数千万から数億ドルもの資金がPrivacy Sandboxの開発に費やされてきたようだ。

今回の発表では、Privacy Sandboxの一部機能の開発は継続されるものの、具体的なロードマップは示されていない。複雑なAPI群であるPrivacy Sandboxのどの部分が今後サポートされるのかは不透明であり、広告業界は今後のGoogleの動きを注視する必要があるだろう。

さらに、米国においては、Googleが広告技術市場と検索市場において独占的な地位を濫用しているとして、複数の訴訟が提起されている。特に、最近の連邦判事の判決では、Googleが広告技術市場を違法に独占していたと認定された。また、司法省は検索市場における独占を巡る訴訟において、GoogleのウェブブラウザであるChromeの分離を求めている。Chromeの高いシェアが、Googleの検索エンジンへのトラフィック誘導を容易にしているという点が問題視されている。

これらの訴訟の行方は、今後のGoogleの事業展開、ひいてはデジタル広告そのものに大きな影響を与える可能性があるだろう。

プライバシー保護の重要性が高まる中で、クッキーに依存しない新たな広告手法への移行は不可避であると考えられてきたが、今回の決定により、それは遠のいたようだ。

これで、プライバシーを尊重しているようなブラウザーのBrave、FirefoxやSafariにユーザーが移行するということも考えられないから、当面はサードパーティ・クッキーを利用した広告配信が継続することになった。

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