Metaの新しいAI動画編集機能

by Shogo

Metaが、新しいAI動画編集機能を発表した。

この新機能は、Meta AIアプリ、Meta.aiウェブサイト、そしてCapCutの競合アプリである「Edits」でアメリカ国内にで展開される。多分、近日中には日本を含む海外でもリリースされるだろう。新機能を使って、ユーザーは50種類のプリセットを使用して10秒間の動画を編集することができる。Metaは、これらのプリセットを作成する際に、映像クリエイターからフィードバックを収集し、Editsアプリに簡単に組み込めるよう設計したという。

具体的な編集機能

新しいAI動画編集機能では、動画に様々な視覚的効果を適用することができる。多くの映像のスタイルを動画に適用したり、例えば、動画の被写体を大理石の彫像やビデオゲームキャラクターのように変換することが可能だという。

また、動画の撮影場所を瞬時に変更することができる。例えば、室内で撮影した動画を砂漠のシーンや雪景色に変換したり、ビーチの背景に置き換えることが可能だ。これにより、実際にその場所に行かなくても、魅力的な背景での動画コンテンツを制作できる。

発表された動画では、踊る被写体の人物の服装を宇宙服に変更したり、AIが生成したタキシードを着せることができる。これは特にファッション関連のコンテンツや、コスプレ動画の制作において使えるだろう。

さらに、動画のクリップに雨の日の照明効果を適用したり、夢幻的な照明効果やカラーオーバーレイを追加することができる。これにより、動画の雰囲気を大幅に変更し、より印象的なコンテンツを作成できる。

Instagramクリエイターへの具体的なメリット

新機能でコンテンツ制作の効率化が出来る。これまでは高度な編集効果を実現するには、専門的な動画編集ソフトウェアや技術的知識が必要だった。しかし、この新機能により、技術的な専門知識を持たないクリエイターでも、プロフェッショナルレベルの視覚効果を簡単に適用できるようになる。

編集された動画は、EditsアプリやMeta AIアプリからFacebookやInstagramに直接共有することができる。また、Meta AIアプリやMeta.aiウェブサイトからは、Discoverフィードに共有することも可能となる。

特に重要な点として、この機能で編集された動画はウォーターマークなしで出力されるため、プロフェッショナルな見た目の映像コンテンツを制作でき、別の用途にも使えるようになる。

市場への影響と競合他社との比較

Metaのこの動きは、GoogleやCaptionsなどの他のAI搭載編集プラットフォームとの競争激化を示している。特に、ByteDanceのCapCutとの直接的な競争を意識しているだろう。実際に、Editsアプリは2025年4月の最初の週で700万回以上のダウンロードを記録し、25カ国でカテゴリー1位、121カ国でトップ10入りを果たした。これは、市場でのこの種のツールに対する強い需要を示している。

技術的背景とMovie Gen AI

この動画編集機能の背景には、MetaのMovie Gen AI技術がある。Movie Gen AIは、テキスト入力からカスタム動画と音声を生成し、既存の動画を編集し、個人の画像をユニークな動画に変換することができる生成AI研究だ。

報道によると、Metaは2025年後半により多くのカスタマイズオプションを追加する予定だという。現在はプリセットプロンプトのみの使用に限定されていますが、将来的にはユーザー独自のテキストのプロンプトを使用した映像生成が可能になるようだ。こうなると、Instagramには、完全にAIが生成した映像が溢れそうだ。

今後追加予定の機能

  • キーフレーム機能:特定の瞬間での位置、回転、サイズの制御
  • コラボレーション機能:他のクリエイターやブランドとのドラフト共有
  • 拡張されたクリエイティブオプション:より多くのフォント、テキストアニメーション、トランジション、音声効果、フィルター、音楽

マーケティングの観点から見ると、この新機能はコンテンツ制作のコスト削減と制作時間の短縮を実現する。広告主は、高価な制作機材や専門的な編集ソフトウェアに投資することなく、魅力的な動画コンテンツを制作できるようになる。また、リアルタイムでのコンテンツ適応が可能になることで、トレンドに素早く対応したマーケティングキャンペーンの展開が容易になる。InstagramなどのMetaのプラットフォームでの広告活動が容易になりそうだ。

MetaのAI開発

AIでは出遅れ気味のMetaが、大きな戦略転換を図っている。AIデータラベリング企業Scale AIの株式49%を148億ドル(約2兆1400億円)で取得することで合意したと報じられている。この投資は、Metaにとって史上最大規模の外部AI投資となり、これまで内部開発に依存してきた方針からの大きな転換となる。

Metaがこのような大胆な投資に踏み切る背景には、AI開発における深刻な遅れがある。大規模言語モデル「Behemoth」は、当初2025年4月のリリース予定から6月に延期され、さらに秋以降への再延期が決定している。この開発遅延により、Metaの株価は一時3.2%下落している。

「超知能」研究所の設立

Scale AI投資の一環として、同社CEO のアレクサンダー・ワン氏(28歳)がMetaの最高幹部となり、新設される「超知能(Superintelligence)」研究所を率いることになる。超知能は、人間レベルの汎用人工知能(AGI)を超える概念で、人間の集合知を凌駕する可能性のあるAIシステムの開発を目指しているようだ。

ザッカーバーグCEOは、この研究所のためにAI研究者に高額の報酬で、約50人の専門チーム組成を目指しているそうだ。また、Scale AIの研究者だけでなく、OpenAIやGoogleからも研究者を引き抜いていると報じられている。

この投資により、Scale AIの企業価値は2024年の138億ドルから280億ドル~300億ドル規模へと大幅に上昇した。Scale AIは、MicrosoftやOpenAIなどの大手企業を顧客に抱え、AI学習に必要な高品質データの精製技術で業界をリードしている企業である。少し疑問なのは、MicrosoftやOpenAIが、今後もScale AIにデータラベリングやAIトレーニングを依頼するのだろうか。

ザッカーバーグCEOは2025年1月に、AIに最大650億ドルを投じると発表しており、今回の投資はその具体的な展開と位置づけられる。Metaは、これまでのソーシャルメディア企業からAI基盤企業への転換を目指しているようだ。OpenAIやAnthropicとの超知能開発競争が激化している状況下で、データラベリング分野のトップ企業買収により高品質なAI訓練データ確保という最重要課題の解決を図ったと言える。

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