米連邦地方裁判所が、Google独占禁止法違反裁判への判決を下した。結果は拍子抜けのものだった。表面的には制裁措置でありながら、実質的にはGoogleにとって大きな問題はない。むしろ、検索エンジンの初期設定のための契約を中止するという命令だったために、その経費がAI開発などに振り向けられる。
司法省が強く求めていたChromeブラウザとAndroid OSの分割・売却要求は完全に退けられた。判事は、司法省が、これらの主要資産の強制的な売却を求める点で行き過ぎていると明確に判断を示した。
やはり大きいのは、話題になってきた、Chromeブラウザの売却命令を回避できたことだ。この結果、Alphabetの株価は時間外取引で一時9%上昇した。
判決は、Googleが長年維持してきた検索市場での支配力の源泉である、検索エンジンの排他的初期設定契約を全面的に禁止した。これにより、GoogleがApple、Samsung、Mozillaなどに支払ってきた年間総額260億ドルに及ぶ初期設定料の支払いが停止される。Apple単体への支払いだけでも年間200億ドル以上に達していたこの契約は、Googleの検索独占を支える最重要な武器だった。Appleにとっても重要な契約で、Appleの利益の1割にも達する金額だった。
一方で、判決はGoogleに対し、競合他社への検索データ共有を義務付けた。これにより、Microsoft Bing、Perplexity AI、OpenAIなどの競合企業が、Googleが蓄積してきた膨大な検索インデックスデータやユーザーインタラクションデータにアクセス可能となる。ただし、広告関連データは対象外とされており、Googleの広告収益源は保護された形となっている。
AIの普及に伴って、検索の市場は変わりつつある。例えば、Perplexity AIはリアルタイムウェブ検索機能を備えたAIクエリエンジンとして他を圧倒していると評価されており、ChatGPTとは異なる「検索に特化」したアプローチで市場シェア獲得を目指している。今回のデータ共有義務により、これらの競合AIサービスはGoogleの検索データを活用してサービス品質を向上させる機会を得ることになるだろう。
同時に、Googleも検索エンジンの初期設定料の支払いが禁止されたことで、その資金をAI検索開発に振り向けることができる。
問題なのは、年間200億ドルの安定収入を失うAppleだろう。コストを伴わない巨額の料金を失うことで、短期的な痛手は避けられない。
報道によると、日本市場への波及効果もありそうだ。日本の公正取引委員会もGoogleの一般検索サービスに関して排除命令を出す予定とされており、この判決の影響は出てきそうだ。