PayPalによるPinterest買収

by Shogo

PayPalがPinterestを買収しようとしているようだ。その価格は450億ドル、約5兆円だ。これは現在のPinterestの株価の総額の25 %増となる。この取引が成立すれば、Salesforce.comがSlackを買収した277億ドルを超えて、今年の最大の買収となる。PayPalは、2015年にeBayから独立した会社で、その市場価値は3060億ドルもある。

PayPalとPinterestと言う不思議な組み合わせと最初は思った。しかし、考えてみれば支払いの方法は多様化しており、PayPalが創業した頃のとは様相は大きく変わっている。競合会社の登場、スマホによるQRコード決済や今後のブロックチェーン決済など、インターネット上の決済の形は大きく変えつつある。

PayPal自体も、競争にさらされて危機感を感じているのだろう。この決済市場の防衛のために、日本のPaidyやスウェーデンの iZettleの買収を最近行なっている。

今回のPinterestの計画は、決済のさらに川上の購入の場の買収と考えられる。Pinterestは他のソーシャルメディアに比べると、物品の購入に近い位置づけにある。Pinterestは、インターネット上にある写真にピンを立てるで自らのボードを作っていくサービスだ。Pinterestは、さらにショッピングの機能を付け加えて、購入できるピンを明示するようになっている。

ユーザーは、Pinterestに表示される写真を見て購入できるピンがあれば、そこから直接買うこともできる。この機能は、主流になりつつあり、Instagramを始め、多くのソーシャルメディアが直接購入できるような仕組みを導入するようになってきている。そこで登場するのが、PayPalによる決済と言うことなのだろう。

そう考えると、決済の市場を守るために、川上の購入の場を自ら所有する形での垂直的なビジネスモデルを構築しようとしている。

かつては盤石だと思われたPayPalだが、すでに様々な競争にさらされて、今回の買収も、事業拡大と言うよりも、本業の防衛と言う色彩が強いのだろう。Pinterestの月間アクティブユーザ数は、2020年7月の発表によると4億人を超えていると言う。これをPayPalの決済の顧客として取り込むことが第一の目的だ。かつては、企業は資産で買収されたが、今はその顧客が資産だ。

Pinterestには楽天が出資をしているのは有名な話だ。その出資比率は明らかにされていないが、かなりの大きな割合を持っていると考えられている。このためPinterestが2019年に上場した際には楽天の株も高値を付けた。もしPayPalによるPinterestの買収が成立した際には、楽天にも大きな売却益が入ることになり、携帯電話ネットワークの設置に力を注いでいる楽天にとっても資金的な余裕ができるのだろう。このニュースで楽天の株価も上がっているかもしれない。だが、個別株に興味はないので確認はしない。

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