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「大いなる幻影」を渋谷で見た。71年前の作品だから、今なら中心になるであろう脱走シーンやアクションシーンはあまりない。それと気になったのが、登場人物のバストアップのセリフのシーンが多い。その頃は、映画のレンズは1種類だったのだろうか。
映画に出てくるゼラニウムが白黒の画面の中でも赤く見えた。映画館を出てからモノクロ設定で写真を撮ってみた。
戦争も国も階級もある意味で人間の見る幻影なのだろう。ただ、人間が動物と違うのは、幻影に生きて幻想に死ねること。その意味で幻影はリアルだ。ドイツ人収容所長がフランス人将校を撃ったのよう、幻影は現実の銃弾を生み出す。
ドイツとフランスの貴族でもある将校が、戦死について話すが、フランス人将校が犠牲になることを選んだのは、戦死したかったらではなく、ノブレス・オブリージュなのだろう。
最後に、ジャン・ギャバンと役名ローデンタールは逃げ切れるが、国境越に銃を撃たなかったドイツの国境警備隊の隊長は、唐突だ。逃げる途中で一度、絡みがあってそれで最後に撃たせなかったとかの方が面白い。
戦争なんかなければ良いと言ったら、それも幻影だとローデンタールに言われた。
エルザとロッテに会えたのだろうか。
学生の頃によく飲んだ、井の頭線のガード付近を歩いた。街は昼間の明るい時間だったことと、大きく変わっていたから、別の街のようだった。あの時間、あの時代も私の幻影の中にしかもう無いようだ。