メタが、社運をかけているメタバースのビジネスに、MicrosoftやNBCユニバーサルなどのパートナーを引き込むことに成功したようだ。
メタバースについては、多くの企業が、様々な構想や挑戦を発表しているが、Metaが有力なコンテンツを持つ企業と提携する事は大きなアドバンテージを持つ。
このパートナーシップを発表したオンラインイベントのConnectで、メタは1499ドルの新製品のヘッドセット、MetaQuest Proを発表した。その機能など詳しい事はよく知らないが、まずこの値段に驚いた。MacBook Proよりも高いヘッドセットが果たして売れるのだろうか。今までゲームで使われているMetaQuest 2は500ドル程度のものなので値段が3倍になっている。
ハードウェアの普及のためには、ソフトウェアが肝になる。その意味で、MicrosoftとNBCユニバーサルのコンテンツは強力な援軍だ。Microsoftの参加で、MetaQuestをビジネスで使う場合には、企業向けではデファクトのMicrosoft Officeを使い、Windowsにもアクセスできるようになる。MetaQuestのようなヘッドセットが実際にオフィスで使われるようになるか分からないが、使われるようになると必須のソフトウェアだろう。
Metaがビジネス用に提供しているVRアプリのHorizonWorkroomsでも、Microsoftのアプリが共有できるなどの使い方ができるようになる。
また、NBCユニバーサルとの提携では、NBCユニバーサルの持つ様々なコンテンツが使えるようになる。そして、NBCユニバーサルの定額配信サービスのPeacockをMetaQuestの中でアクセスが可能になる。ただしこれについては、そもそも、そのコンテンツは2次元のために、何のためにMetaQuestを使ってを視聴するのかよくわからない。遠い将来にコンテンツがVR化したときの対応なのだろうか。
MicrosoftにしてもNBCユニバーサルにしても現時点におけるビジネス上のリターンを期待していないだろう。将来、マーク・ザッカーバーグのMetaが大きく成功を引き当てた時のための保険のような考え方なのだろうか。
マーク・ザッカーバーグは10年前に、それまでのPCをベースとしたビジネスから、スマホをベースとしたビジネスに事業の焦点を移し、大きく波に乗ることができた。主となるプラットフォームの移行も見越して、ギャンブルをしたわけだが、結果的には大成功だった。
そしてその成功の果実を使って、競合となるようなInstagramやWhatsAppのようなアプリを買収により、自社内に取り込んで、さらに強固な帝国を作り上げた。
しかしながら、良い事はいつまでも続くものではない。政治的な発言や行動良俗に反するような発言などを制限するどころか、むしろ助長してビジネスに利用したことや、社内のスキャンダルなど様々な問題で直面して苦しい立場になったのは近年のことだ。そしてそこにiPhoneのプライバシーポリシー変更による、ユーザのトラッキングが困難になったために、広告費収入が大きく落ち込んだ。これが、最後の藁だった。株価は1年で60%持ち込み、苦しい状況になっている。
スキャンダルの最中の昨年、突然メタバース企業への変革を打ち出して、社名をMetaに変えた。スキャンダルとは関係なかったのかもしれないが、タイミングがタイミングだけに、不名誉な評判に包まれたFacebookの社名を捨てて、Metaと変更することにより企業イメージの一新を図るような、安っぽい手に見えたものだ。その後、数千億ドルをかけて、メタバース企業へのビジネスの立ち上げを図っているが、どうもうまくいっていないようだ。
MetaQuestのゲームというか、Second WorldのようなアプリのHorizonWorldは、まだ数か国でしか稼働していないし、ユーザの数も、今年の春の状況で30万人のユーザとされている。数十億人のユーザを抱えるFacebookやInstagramのビジネスと比べれば、微々たるもの以下の状況だ。しかもそのアバターや世界観の作り込みなどがお粗末と言うことであまり評判も良くない。このような状況の中で、メタバースを普及させるための強力なコンテンツが必要であろう。
そしてそれは、多分オフィスユースではなくてゲームだ。だからMicrosoftいやNBCユニバーサルを引き込み、Xboxなどの有力なゲームをVR化してメタクエストの世界で販売する事は、Metaの考えるメタバースの離陸につながる。歴史上新しいハードウェアプラットフォームは、強いコンテンツがなければ普及しない。これだけは確実だ。
だから、どうやって口説いたのかわからないが、MicrosoftやユニバーサルNBCユニバーサルをとの提携にこぎつけた事は、Metaにとってとりあえず成功への第一歩だろう。しかしながらまだまだ道は遠い。誰も将来的にメタバースのような世界が来ないとは言っていない。問題はそれがいつ来るかだ。主力事業のFacebookやInstagramが持ちこたえてる間に、メタバースが実用化されるかどうかが勝負だ。
個人的にはHorizonWorkroomsのようなVRのビジネス環境など必要ないと思っている。ただ会議で話すだけでは、何十年も前から電話会議があり、その後Zoomのようなビデオ会議が使われている。それで充分に意思疎通ができるわけで、VR空間のような臨場感が必要と思えない。いや、むしろビジネスの相手とそのような臨場感を持って接したいとも思えない。その意味でオフィスユースと言うのはあまり考えられないのではないだろうか。
だから可能性としては、XBoxのフライトシュミレーターのようなゲームがMetaQuest上で臨場感を持って使えるというのが可能性の第一歩だろう。マーク・ザッカーバーグのメタバースへの賭けは、成功するにしてもまだまだ遠い。