iPad広告「Crush」の炎上

by Shogo

Appleの新しいiPad広告「Crush」が問題となっている。この広告では、楽器やカメラ、絵の具など、クリエイターが大切にしている道具がプレス機で無造作に押しつぶされる様子が、それらの物へのリスペクトに欠けると批判された。

この表現は、日本でまず炎上して世界に広がったようだ。私も、ひと目で不快な感覚を覚えた。それは、物に魂が宿るという考え方が日本人には馴染み深いということもあるし、クリエイティビティやアーティスティックな価値を物理的に破壊するというメイメージが強かったからだ。

世界中で批判を呼んで、Appleは動画をお蔵入りして、新しいiPad Pro広告動画を公開している。この動画では、iPad Proを使って様々なクリエイティブな活動を行う人々の姿が描かれている。こちらの方が、普段のAppleの広告だ。

新しいiPad にとっては、不幸な新発売だ。さらに市場も優しくない。IDCによれば、世界的にタブレット市場が低迷している。2023年のタブレット出荷台数は1億2,850万台と、10年以上ぶりの低水準に落ち込んでいる。AppleやSumsungなどの大手メーカーの販売数も減少した。

IDCは、景気の改善がなく、消費者が家電以外のものにお金を割り当てている中で、タブレットは優先順位が高くない可能性があると分析している。

タブレット市場が冷え込んだ背景には、いくつかの要因があるだろう。まず、タブレットは、スマートフォンよりも長く使用される傾向にある。また、スマートフォンの大画面化が進み、追加のデバイスを購入する必要性が薄れてきたことも影響しているかもしれない。

2014年には2億3,000万台を記録したタブレット出荷台数は、2019年には1億4,500万台までに減少した。その後、新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅勤務や在宅学習が広がったことで、2020年と2021年は消費者や教育分野で需要が急増し、市場は一時的に回復した。しかし、この反発は長続きせず、タブレットはノートPCとスマートフォンの間で、中途半端になっているかもしれない。

そんな中での新しいiPad ProとiPad Airの発表だ。今回の新製品は薄型が特徴ということで、様々な道具がプレス機で無造作に押しつぶされる様子が広告で表現されたのだろう。少しアイディアが単略的だった。もう少し考えても良かったのだろう。

2024年度上半期のiPad販売台数は前年同期比で20%減少するなど、ここ2年は苦戦が続いている。この状況の打開のために、今回の新製品への期待が空回りしたということだろうか。

しかし、タブレット市場の低迷の中でAppleは圧倒的なシェアを維持している。IDCの推定によると、Appleは2023年に4,850万台のiPadを出荷したが、これは2022年の6,050万台から約20%減少している。大きな落ち込みだ。それにもかかわらず、市場全体や他の競合他社の落ち込みがさらに深刻だったため、Appleのシェアは0.5ポイント増加した。世界のタブレット出荷台数が1億2,850万台まで減少する中、トップ5のタブレットメーカーで販売台数がプラスだった企業は1社もなかった。それほど、タブレットの市場環境は厳しい。

Appleは、出荷台数で40%近く、金額ベースではそれ以上の圧倒的なシェアを維持しており、新しいiPadの投入が、これをさらに伸ばせると考えていたのだろう。

広告は炎上はしたが、新しいiPadは素晴らしい製品だ。だから、かなり売れると思われる。しかし、そろそろ買い替えと考えている身には、新しい価格は、円安もあるのだろうが余りにも高く、もう少し、今のiPadを使い続けようと思っている。

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