Adidasは、2021年にDTCモデルに移行することを中心にした事業計画を発表した。これは、「Own the Game」と呼ばれる4カ年計画だ。この戦略の一環として、Adidasは、「消費者への直接販売が2025年までに総売上高の半分を占め、それまでの目標収益成長に80%以上貢献する」と宣言している。この計画では、直営店、直営オンラインショップ、ファクトリーアウトレットで消費者に直接販売することに注力する。そして、直接販売する登録会員数を3倍の5億人に増やし、オンラインショップでの売上高を約100億ドルに倍増させる計画だ。
DTCとは、Direct To Consumerの略で、企業が自社製品を直接消費者に販売するビジネスモデルのことだ。 従来は、企業は卸業者や小売業者を介して消費者に販売していましたが、DTCモデルでは、企業が自社ECサイトやSNSなどを通じて、直接消費者に販売する。
DTCモデルのメリット
DTCモデルのメリットとしては、以下のようなものが挙げられる。
コスト削減
卸業者や小売業者を介さないため、中間マージンを削減でき、コストを抑えることができる。
顧客データの収集
自社オンラインショップやSNSを通じて、顧客の購買データや行動データを収集する。このデータを分析すること で、顧客のニーズを把握し、マーケティングや商品開発に活用することができるようになる。
ブランドイメージの向上
自社オンラインショップやSNSを通じて、企業のブランドイメージを直接消費者に伝えることができる。
DTCモデルの拡大の要因
DTCモデルは、以上のようなメリットがあるために、近年、急速に拡大している。その背景には、以下の要因がある。
インターネットの普及とモバイル化
インターネットの普及とモバイル化により、消費者はいつでもどこでも商品を購入できるようになった。近年の新型コロナ感染症がこの、この傾向に拍車をかけた。
デジタルマーケティングの進化
デジタルマーケティングの進化により、企業はオンラインで、さまざま手法を使って効果的に顧客にアプローチできるようになった。
消費者の意識の変化
消費者の意識が変化し、従来の流通チャネルに疑問を抱きいたり、接点がない消費者が増えている。ここでも、新型コロナ感染症の影響もある。
DTCモデルが盛んな業界
DTCモデルは、以下の業界で特に盛んだ。
ファッション
アパレルブランドや化粧品ブランドを中心にDTCモデルが拡大している。消費者は、自分の好みに合った商品を、自分のペースで購入したいと考えており、DTCモデルがそのニーズに応えている。
食品・飲料
スナックや飲料でもDTCモデルが拡大している。消費者は、新商品や限定商品をいち早く試したいと考えており、DTCモデルがそのニーズに応えている。
家電・日用品
小型家電やペット用品を中心にDTCモデルが拡大している。消費者は、商品の使い方や特徴を詳しく知りたいと考えており、直営オンラインショップによるDTCモデルは、そのニーズを満たしている。
AdidasやライバルのNIKE、PUMAの3大スポーツブランドのDTC売上を比較すると、大きな違いがあるようだ。最も進んでいるNIKEは、2019年のDTCシェア32%を2022年までに44%まで伸ばしている。Adidasも、それには及ばないが、2019年のDTCシェア33%を2022年までに39%まで伸ばしている。だが、「Own the Game」計画にもかかわらず、NIKEには追いついていないようだ。この理由はよく分からない。
世界第3位のPUMAは、大きく遅れをとっている。2019年のDTCシェア25%は、2022年に23%と逆に減少している。この理由もよく分からない。
今後も、DTCモデルは拡大していくと予想される。インターネットの普及やデジタルマーケティングの進化、消費者の意識の変化など、DTCビジネスを後押しする要因は今後も続く。