LVMH が映画・テレビ業界へ参入

by Shogo

LVMH が映画・テレビ業界への参入を発表した。Superconnector Studios.と共同で映画やテレビシリーズを制作する制作会社として 22 Montaigne Entertainmentを設立した。

これは単なる話題作りではなく、ファッションとエンターテイメントの融合という大きな潮流を象徴する出来事だ。映画やテレビのコンテンツはファッション販売に大きな影響を与えてきた。このために、ファッションブランドは、映画やテレビに衣装などを貸し出してプロダクトプレイスメントテストを行ってきたが、一歩踏み込んで制作会社を持つのは最近の傾向だ。この動きは、単なる露出を超え、ブランド自体が映画やテレビ制作に深く関与するようになったことが特徴的だ。

映画史を振り返ると、ファッションは単なる衣装ではなく、ストーリーやキャラクターを語る重要な要素として存在してきた。オードリー・ヘップバーンが「ティファニーで朝食を」で着用したブラックドレスは、時代を超えて愛されるファッションアイコンとなった。また、アルマーニは、リチャード・ギアが主役の「アメリカン・ジゴロ」のファッションをすべて担当することで1980年代のファッション・アイコンとなった。

最近では、2023年の映画「The Marvels」では、シャネルがキャプテン・マーベルの衣装をデザインしたことが話題となった。このコラボレーションは、映画の公開前から大きな注目を集め、シャネルのブランドイメージを大きく変えた。

コンテンツがブランディングに大きな効果を持つために、映画やテレビ番組に特定のブランドを登場させるプロダクトプレイスメントが盛んに行われている。映画「ハウス・オブ・グッチ」では、劇中に登場する衣装や小道具が話題となり、グッチの検索数が257%増加したそうだ。

スマホやタブレットの普及により、視聴者はいつでもどこでも映画やテレビ番組を楽しめるようになった。さらに、近年はNetflixなどの動画配信サービスが台頭し、視聴スタイルはますます多様化している。こうした変化に対応し、ファッションブランドは、ソーシャルメディアやVR/AR技術も活用してエンターテイメントを新たな販売チャネルとして活用し始めている。

LVMHによる制作会社の設立は、ファッションとコンテンツの融合の最初の事例ではない。すでに、Saint Laurentは Saint Laurent Productionsを設立して独自の作品を制作するなど、積極的に映画業界に進出している。短編映画、「Strange Way of Life」、「Trailer of the Film That Will Never Exist: Phony Wars」、「The Summer of ’21」が公開された。「The Summer of ’21」は、サンローランのクリエイティブ・ディレクターであるアンソニー・ヴァカレロが監督を務め、ファッションとアートを融合させた作品として高い評価を得ている。

LVMHも22 Montaigne Entertainmentの設立前にすでに、エンターテイメントに進出していた。LVMHのオーナーのフランソワ・アンリ・ピノーは、一族の持株会社アルテミスを通じて、大手タレントエージェントのCREATIVE ARTISTS AGENCY(CAA)の株式の過半数を2023年9月に取得している。これが、制作会社設立の準備だったことは明らかだ。

今後、映画やテレビ番組とファッションの融合はますます加速していくと思われる。バーチャルリアリティや拡張現実などの技術を活用することで、視聴者はより没入感のある体験ができるようになり、商品購入への導線も短くなるだろう。これに、ソーシャルメディアとの協業・融合も進む。ファッションブランドは、エンターテイメントやソーシャルメディアを通じて顧客とのエンゲージメントを高め、新たなファンを獲得していくだろう。

エンターテイメントとファッションの世界が交差する時、新たなビジネスチャンスが生まれてくると思われる。

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