2024年のスマートフォン市場は、パンデミック後の低迷を脱し、回復を見せているようだ。IDCの調査データによると、2024年第3四半期の世界スマートフォン出荷台数は前年同期比4.0%増の3億1610万台となり、5四半期連続の成長を達成した。
IDCによれば、この成長を牽引しているのは、主に以下の3つの要因だ。
- 新興国市場の成長: Vivo、Oppo、Xiaomiなどの中国メーカーが、新興国市場で積極的な販売戦略を展開し、市場を拡大しています。 特にvivoは、積極的な製品投入と低い前年同期比ベースにより、22.8%増という大幅な成長を遂げた。
- 先進国市場における買い替えサイクルの活性化: 北米、中国、ヨーロッパなどの先進国では、パンデミック後に買い替えサイクルが活性化し、需要が拡大。
- AI技術の進化: Appleの「Apple Intelligence」やSamsungの「Galaxy AI」など、AI技術を搭載したスマートフォンの登場が、消費者の購買意欲を高めている。
メーカー別の戦略と動向
Apple
iPhone 15の販売促進と新型iPhone 16シリーズの投入により、前年同期比3.5%の出荷台数増加を実現。特に、iPhone 15は、積極的なプロモーションとApple Intelligenceのマーケティング活動により、好調な販売を記録。今後も、iPhone 13やiPhone 12以前のモデルからの買い替え需要を取り込み、成長を継続すると予想されている。
Counterpoint Researchによると、iPhone 15は2024年第3四半期の世界で最も売れたスマートフォンであり、iPhone 15 Pro MaxとiPhone 15 Proがそれに続く。また、iPhoneのProモデルの販売比率が増加しており、高価格帯モデルへの移行が進んでいるという。
Samsung
市場シェア首位を維持しているが、出荷台数は減少。Galaxy AIを搭載した折りたたみ式スマートフォンが好調で、プレミアムセグメントでのシェアを拡大。Galaxy AI機能を他のSamsungモデルにも展開し、プレミアムセグメントにおける売上拡大を狙っているという。
Counterpoint Researchによると、Samsungは、世界で最も売れているスマートフォン上位10機種に5機種をランクインさせており、安定した人気を誇る。また、Galaxy S24シリーズは、GenAI機能に焦点を当てた販促により、販売を伸ばしているという。
Galaxy Aシリーズは、競争力のある価格設定とソフトウェアサポートにより、エントリーおよびミドルレンジ市場で4機種を上位10位にランクインさせいる。
Xiaomi
Redmi 13Cが、手頃な価格と新興国市場での活動により、2四半期連続で上位10位にランクイン。
課題
スマートフォン市場は成長を続けているが、IDCは、いくつかの課題も指摘している。
- 新興国以外での需要の低迷: 先進国市場では、買い替えサイクルの長期化や市場の飽和により、需要の低迷が懸念。
- EUの環境規制: EUの環境規制強化により、メーカーは製品設計や生産体制の見直しを迫られている。
- 在庫管理: 需要変動に対応した適切な在庫管理が、メーカーにとって重要な課題。
- 消費者の買い替えサイクル延長: 消費者は、スマホの買い替えサイクルを延長する傾向にあり、メーカーは新たな収益源の模索が求められている。
今後の展望
IDCは、2025年以降もスマートフォン市場は緩やかな成長を継続すると予測。Apple IntelligenceやGalaxy AIなどのAI技術の進化、低価格帯スマートフォンの性能向上が、市場成長を後押しすると考えているという。
一方、各メーカーは、消費者の買い替えサイクル延長に対応するため、新たなサービスや機能の提供、サブスクリプションモデルの導入など、新たな収益源の確保に取り組む必要があると指摘している。
特に、日本などの先進国市場では、市場の成長は期待できないため、短い買い替えサイクルと上位機種販売がマーケティングの重要な課題となる。今後は、消費者のニーズを捉えた製品開発、新興国市場の開拓、新たな収益源の確保など、メーカーの戦略が市場の成長を左右する鍵となる。