楽天グループのAI戦略

by Shogo

DeepSeekで大騒ぎになっている。数年前のメタバースは話もでない。だからだろうが、Metaのメタバースへの投資が大赤字になっているようだ。Appleのスマートグラスの中止も、その流れなのだろうか。ともかく、ChatGPTが登場して以来は、話題はAIだ。

楽天グループもAI分野での取り組みを積極的に行ってきている。2023年8月にOpenAIとの協業を発表し、最新のAI技術を活用した新たな体験を提供するサービス開発に取り組むことを発表している。この協業により、消費者の購買体験の革新やビジネスパートナーの生産性向上を目指すと宣言していた。また、2023年11月には、OpenAIが戦略的パートナーとして参画し、新たなAIプラットフォーム「Rakuten AI for Business」を発表した。このプラットフォームは、営業、マーケティング、カスタマーサポートなど、企業の多様な活動を支援することを目的としているようだ。

どの企業もそうだが、AI技術は、どのようなビジネスであっても事業運営に大きな変化をもたらす可能性がある。例えば楽天なら、EC事業、各種サービス事業やモバイル事業から得られるデータを活用することで、AI技術の訓練や高度化を進め、楽天全体の競争力を高めることができる。

楽天グループの三木谷浩史CEOは、「OpenAIやGoogleと競争するつもりはないが、より垂直統合された専門的なAIを積極的に構築していく」と述べていた。例えば、楽天のモバイル事業は赤字が続いているものの、約800万人の顧客基盤を持ち、この顧客データが非常に価値ある資産となっている。このデータは、AI技術を活用した新しいサービスや製品開発に役立てられるだけでなく、楽天の他の事業領域にも波及効果をもたらすだろう。

楽天の発表によれば、楽天モバイルネットワーク利用者は、他の顧客と比較して楽天市場で約50%多く消費していることが報告されている。また、これらの利用者は楽天カードや旅行、銀行、証券など他のサービスにも積極的に関与しており、このクロスユースデータが楽天全体のサービス強化に寄与してているだろう。この要になっているのがポイント制度だ。これが、楽天経済圏ということだ。

楽天はまた、AI技術を活用した新しいサービスとして、旅行やショッピングエージェントとして機能するAIアシスタントを導入予定だそうだ。このAIアシスタントは、顧客データを基にパーソナライズされた提案を行い、ユーザー体験を向上させることを目指しているという。EC分野では、多くの企業が顧客データを活用したレコメンデーションエンジンや個別化されたショッピング体験を提供しているが、新たな高品質データ源を見つけることは簡単ではない。この点で、楽天のモバイル事業から得られる独自データは、大きな競争優位性となる可能性がある。

さらに、楽天はIoTデバイスなどを活用し、リアルタイムで消費者行動に関する洞察を得る新しいデータ収集方法にも取り組んでいるのだそうだ。このようなデータとAI技術を組み合わせることで、消費者行動予測やサプライチェーン最適化など、多岐にわたる分野で競争力向上が期待される。

楽天はEC以外にも、多様な事業領域でAI技術とデータ活用による革新を進めているという。例えば、高級ブランド向け会員プログラム「Rakuten+」では、高度にエンゲージメントされた顧客層とブランドを結びつけることで、新たな収益源を開拓しようとしている。また、中古ファッション市場では、「Rakuten Rakuma」とeBayとの提携によって、日本製中古ファッション商品の米国市場進出可能性を模索しているそうだ。

楽天グループは、自社の強みである多様な事業分野と膨大な顧客データを活用しながら、AI技術による新たな価値創造に注力しているというのが三木谷CEOの発言だ。特にモバイル事業から得られる独自データが他事業とのシナジー効果を生み出し、新しいサービスや市場機会への道筋を切り開いているのだそうだ。だから、莫大な赤字に耐えながら、モバイル事業に取り組んでいるのだろう。

このような経済圏は、単に相乗効果というだけでなく、AIを訓練するデータとしても利用できる。このようなことは自明だから、ドコモが銀行を買収しようとしているのだろう。今やAI分野は、どのような企業も取り組まねければいけないということが明らかになってきた。

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