LINEヤフーのAI活用

by Shogo

日本では、アメリカに比べてAI利用が進んでいないという話は多いが、積極的にAI利用を進める事例が現れた。

LINEヤフーは2025年7月、全従業員約11,000人を対象に「生成AI活用の義務化」を前提とした新しい働き方を開始すると発表した。これは日本の企業として画期的な決断だろう。同社では従業員の業務の30%を占める「調査・検索」「資料作成」「会議」の共通領域から着手し、具体的な社内活用ルールを策定したそうだ。AI活用の義務化により3年間で生産性2倍を目指すそうだ。

具体的なルール

調査・検索の領域では「まずはAIに聞く」を基本原則とし、経費精算などの社内規則検索には独自の業務効率化ツール「SeekAI」を活用する。競合調査やトレンド分析では「プロンプト例」を策定しAI検索を標準化するという。

資料作成においては「ゼロベースの資料作成は行わない」というルールを設け、作成前にAIを活用したアウトライン作成を必須とした。完成後はAIによる文章校正も実施する。

会議運営では、開催前にAIを活用して議題を整理し、議事録作成をすべてAIで行うほか、任意参加の会議は原則出席せず、AIによる議事録で把握するシステムとする。

テクノロジーの整備

LINEヤフーは、2025年6月から全従業員に「ChatGPT Enterprise」のアカウントを付与し、独自開発のRAG技術を活用した業務効率化ツール「SeekAI」の利用を開始したという。

SeekAIは、社内規程・ルール・問い合わせ先、コーディング時の技術スタック、顧客や取引先とのコミュニケーション履歴などを効率的に把握することを可能にし、テスト導入段階で広告事業のカスタマーサポート業務において98%の正答率を達成しているそうだ。社内で先輩や同僚に聞くのでははなく、SeekAIに聞くのが原則ということのようだ。

ユーザー向けサービス

Yahoo!検索もAIで変革されるようだ。Yahoo!検索では2024年10月から生成AIを活用したAIアシスタント機能を導入し、検索結果上で生成AIによる回答の表示とチャット形式での情報の深掘りが可能になったらしい。ユーザーは「サバ缶を最高に美味しく食べるには?」「会話が弾む自己紹介を教えて」といった自然な会話文で質問できる。Yahoo!検索は、Google検索をエンジンとしていたはずだが、これとの使い分けはどうなっているのだろうか。

LINEの新機能

LINEでは「LINE AI」として、質疑応答、画像分析による情報提供、AI検索、画像生成、画像編集機能を統合したサービスを展開しているそうだ。さらに「AIフレンズ」では、ユーザーが作成したAIキャラクターとの自然な会話体験を提供を開始している。LINE は、コミュニケーションでしか使わないから知らなかった。

デジタル赤字問題への対応

日本の2024年のデジタル赤字は約6兆円に達しており、生成AI利用拡大により今後10兆円規模へ拡大する可能性があるという予測がある。だが、LINEヤフーのような国内企業によるAI技術の自社開発と実装は、この課題への重要な対策となるだろう。

サービスへのAI技術の採用は珍しい話ではないが、LINEヤフーの全従業員のAI活用の義務化は画期的だ。生成AIの活用により今後3年間で業務生産性を2倍に高めることを目標としており、年間70~80万時間の業務改善を目指しているというような事例は、日本では、これまでない。この目標達成は、日本企業のDX推進における重要なベンチマークとなるだろう。

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