PerplexityがGetty Imagesと契約

by Shogo

AI検索のPerplexityと世界最大級のストックフォト企業Getty Imagesが、複数年のライセンス契約を締結したというニュースが流れている。PerplexityはAI検索ツールでGettyの画像を公式に表示できる権利を得た。従来は画像利用に関する著作権侵害疑惑が少なからずあり、ニュースメディアから盗用や無断利用の指摘を受けることが頻発しているが、今回の契約によって、画像の出典元明示やリンク付与を強化しつつ、より合法性と信頼性を高めたコンテンツ配信が実現さる。​

ユーザー視点で見ると、検索結果に高品質な Getty 画像が表示され、そこにメタデータとクレジットが表示されることで、ユーザーは画像の出典をすぐにたどれる。

Perplexity にとっても、自社のUIで視覚的情報を補強できることになる。AIによる回答に適切なビジュアルが付くことで、情報の理解と信頼性が向上するから、サービスの向上になる。

Getty Imagesのような著作権事業者側では、ライセンスで収益分配やAPI経由の利用料設計が可能になり、従来の侵害リスクを機会に転換して、AI由来の収益を取り込める。これが、今後の新たな収益ストリームになる。

主なAI企業と著作権所有者との契約事例

AI普及初期には、著作権所有者による権利侵害の訴訟など軋轢が生じていたが、AI企業と著作権所有者との間でさまざまなライセンス契約が締結されるようになっている。代表的な契約例を以下にまとめてみる。​

AI企業/著作権者契約内容・概要
OpenAI × News Corpニュース記事等の利用権取得。5年契約。出典表記など明記​
OpenAI × Shutterstock画像・動画データセットの利用。6年超のライセンス契約​
Google × Redditユーザーコンテンツ取得と検索改善。データライセンス契約​
Meta × Shutterstock画像データセットの利用契約​
Perplexity × Getty Images画像の表示権と出典明示。複数年契約、収益分配プログラム​

これらの契約は「直接交渉型ライセンス」「商業アグリゲータライセンス」「コレクティブライセンス」など多様な方式があり、出典明示や利用範囲、データ使用権の制限など詳細が定められている。​

著作権所有者によるAI企業への訴訟

しかしながら、AI企業による無断データ利用やコンテンツ生成を巡って、著作権所有者がAI企業を提訴したケースは数多くある。主なケースは以下の通り。

訴訟年著作権所有者(原告)被告AI企業概要・争点
2025年6月作家グループMicrosoft数十万冊の書籍データ無断利用でAIを訓練したとして著作権侵害提訴​
2024年4月美術家グループGoogle/Alphabet著作権作品を無断でAI画像生成(Imagen)に利用と主張​
2025年GitHub/プログラマーOpenAI/Microsoftコードデータの無断利用(Copilot)で著作権侵害提訴​
2024年10月Disney/UniversalMidjourney映画・キャラクター画像の無断生成で著作権侵害・不正競争提訴​
2024年2月Raw Story/AlternetOpenAI/Microsoftニュース記事の無断利用による著作権侵害提訴​

このほか、米国ではOpenAI、Meta、Google、Anthropicなどほぼ全ての大手生成AI企業が著作権訴訟に直面している。​

AIの普及は、創作の概念や仕組みそのものを書き換えつつある。もはや盗用か、協業かという二分法では語れない。いま起きているのは、データと権利の間に新しい経済圏が生まれつつある、という現実だ。

PerplexityとGettyの契約が象徴するのは、かつて曖昧だった、権利を使うと権利を使われる側の関係が、ようやく取引のテーブルに着いたということだ。AIが学習する素材データは、無限に広がるインターネット上の単なるデータではなく、誰かが撮り、書き、所有する著作権対象の知的生産物だ。だから、いま必要なのは訴え合うことではなく、互いの価値を理解して、価値を正当に交換する仕組みを整えることだろう。

もちろん、現実はそうは簡単には行かない。上述の裁判では、AIの学習は「引用」なのか「侵害」なのかという線引きが繰り返し問われている。GettyとStability AI、ニューヨーク・タイムズとOpenAI──いずれの争いも、単なるビジネスの衝突ではない。人間が作る表現による知的生産物と、AIが模倣する知識の境界線を、どのように整理するかという問いである。

これまでに存在しなかった、この課題と混乱の中で、著作権企業は、データを守りながらも、それを正当に貸し出すことで新しい収益を得ようとする動きを始めた。かつて広告収入に依存していたメディアが、今度はAIへのライセンスを新しい柱にしようとしている。これは、メディアビジネスやコンテンツビジネスを大きく変える萌芽となるだろう。

一方で、AI開発会社も姿勢を変えつつある。無断で集めたデータに頼るのではなく、正式な契約のもとに素材を扱い、出所を明示する方向に舵を切っている。PerplexityがGettyの写真にクレジットを添えるのは、法の遵守というよりも、信頼を得るための新しいルールといえるだろう。AIが生み出す言葉や画像がどこから来たのかを示すことが、コンテンツ価値の一部になる時代が始まっている。

こうしてみると、AIと著作権の問題は、単なる法律の話ではない。これは社会が「創造とは何か」「オリジナルとは誰のものか」を再定義する過程だろう。かつて印刷技術が出版を変え、レコードが音楽を変えたように、AIもまた、創造のルールを更新している。大学時代に先生が「日のもとに新しきもの無し」と言っていたことを思い出す。

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