先日、AppleがApple Vision Proの生産を縮小するという記事を読んだばかりだったが、一方MetaのMeta Ray-Ban Displayは、予想を超える人気に直面しているという記事が出ていた。昨年秋の発売以来、注文が殺到し、ウェイトリストは2026年後半まで延びてしまったそうだ。その結果、イギリス、フランス、イタリア、カナダへの展開は一時停止を余儀なくされているという。価格は799ドルからと決して安くはないが、それでも消費者は列をなして待っている。
この状況は、ウエアラブル市場におけるパラドックスだ。Apple Vision Proが3,499ドルという価格設定で苦戦する一方、Metaの製品は手頃な価格帯で使える機能を提供することで成功を収めている。Financial Timesによれば、Appleは製造とマーケティングへの支出を削減したという。空間コンピューティングの未来を語るには、まだ早すぎたのかもしれない。
今年のCESで発表された新機能は、MetaがどこにAIウエアラブルの本質があるかを考えていることを明確に示している。プロンプター機能は、メガネのディスプレイに原稿を表示し、スピーチやプレゼンテーションをサポートする。スマートフォンからコピーした文章を、必要に応じて目の前に映し出せる仕組みだ。これは実用的だ。
もう一つ驚くべきなのは、Meta Neural Bandとの組み合わせで実現する「空中ライティング」だろうか。机の上や、手を体の横に置いたまま、指で文字をなぞるだけでメッセージが送信できる。テクノロジーが身体の延長となる瞬間がやってきたと言えるだろう。まるで夢に見たような機能だ。
技術の進化は、常に人間の身体性と対話しながら進んでいく。キーボードは指の動きを、タッチスクリーンは触覚を拡張した。そして今、ウエアラブルデバイスは視覚と身体動作そのものをインターフェイスに変えつつある。それは単なる機能の追加ではなく、人とデジタル世界の関係性を根本から変える試みだと言えるだろう。Metaは手の届く価格で、それを実現している。
Metaの供給不足とAppleの販売不振は、一見矛盾しているようで、実は市場が求めているものを雄弁に語っている。消費者は未来的なガジェットではなく、今日の生活を少しだけ便利にしてくれる道具を求めているのだ。
Appleの「空間コンピューティング」はまだニッチな販売チャネルに留まっている。ショッピングやアプリ内決済のプラットフォームとしては、時期尚早かもしれない。しかし、メッセージ送信やビデオ通話、AI検索結果の表示といった日常的なタスクにおいては、ウエアラブルは確実に受け入れられつつある。個人的にもMeta Ray-Ban Displayは日本で発売されたら買いたいと思っている。
技術の普及には、常に見えない壁がある。それは価格だったり、使い勝手だったり、あるいは社会的な受容性だったりする。2026年以降、ウエアラブルデバイスがこの壁を超えられるかどうかは、いかに当たり前になれるかにかかっている。Metaの製品が示しているのは、Appleの3D映像の革新性よりも実用性、驚きよりも日常への溶け込みやすさなのかもしれない。
