Amazonが自社の広告事業の売上高を初めて発表した。それがなんと2021年第4四半期が97億ドル、通年では310億ドルだった。これはYouTubeの2021年の広告収入288億ドルをはるかに凌ぐ数字だ。
これを日本の広告費に比べてみる。1ドル115円として、Amazonの広告売上高は3兆5,655億円となり、2020年の日本の広告費全体6兆1,594億円の58%に相当する。また、日本の広告費の内訳の、マスコミ4媒体広告費合計が2兆2,536億円、日本のインターネット広告費全体の2兆2290億円の、それぞれの約1.5倍の規模となる。それだけの広告収入をAmazonは一社であげている。
この数字が大きく、Amazonにとって重要な収益源であることは間違いない。Amazonの様々なセグメントの中でも最も高い利益率を持つのが広告事業であると思われる。
しかし、この広告事業が重要なのはAmazonにとってだけではない、広告主にとっても、今後ますます重要になるであろう。AppleのiPhoneのプライバシーポリシーの変更により、Meta (旧Facebook)の広告事業が影響受けているように、2023年のGoogleによる第3者クッキーのサポート停止によっても、広告のターゲティングの精度に大きな問題が生じる。これは、広告主にとっては大きな問題だ。結果として、広告の効率が著しく落ちることが予想されているからだ。
だが、Amazonは顧客データとして、また第1者クッキーとして、Amazonの訪問者のデータを全て持つ。購入履歴、周期、金額、住所、決済情報なども全てだ。これによってAmazonの広告の精度は、第3者クッキーの廃止によっても何の影響も受けない。
しかも、そもそもAmazonで検索を行う人は、何かのを購入するために探している人であるために、この人たちへの広告は、これ以上ないほど確実だ。
現時点ではGoogleやMetaの広告売上高は、Amazonと比べると桁違いだ。Googleの広告売上高は四半期で約700億ドル程度、メタは350億ドル程度もあり、Amazonとは大きな開きがある。しかし、先に述べた状況考えるとこの差は今後もう少し縮まってくるものと思われる。
日本では楽天の広告事業の売り上げは、2021年には四半期で400億円弱程度と発表されている。年間では1,600億円程度。これも、アマゾンの広告事業の四半期の売り上げが1兆円に近いことを考えると大きな開きがある。
楽天全体の売上は、国内トップで2020年で4.5兆円、一方Amazonは2.2兆円程度とされている。日本国内の売上規模では倍の違いがあるが、Amazonは会社全体51兆円なので、Amazon は楽天の11倍の規模だ。これを考えるとAmazonの広告売上3兆5,655億円の11分の1の3,241億円は売上なければいけない。つまり倍だ。楽天の広告事業の伸びしろは大きい。
楽天も、Amazonと同様に日本国内では圧倒的に多数の顧客データを保有し、今後そのデータを活用して広告主に対して様々な提案ができるであろう。しかも、事業のセグメントはEC販売だけでなく、通信、金融、旅行サービスなど幅広い。これだけの、顧客情報を持つ企業は楽天以外にはない。
ただ、会社全体としてはAmazonは規模が大きく、AWS事業もあり、今後広告に関するテクノロジーも開発し、それを日本国内でも展開する可能性もある。広告事業においても楽天は対応急ぐべきだ。