アメリカでは、Amazonの配達の箱が広告メディア化されている。確かに、今の配達の箱の全面が広告になっていれば、受け取るほうは見ないで見られない、視認性の高い広告メディアと言える。
実際に調査会社のカンターがAmazonの配達箱の広告を調査したところ、従来のメディアのキャンペーンに比べて4.1倍も高い広告想起率を示していたそうだ。箱を受け取った際や、注文したものを箱から取り出す際に、広告を見ずにいられない。このためにデザインにもよるが、高い広告効果を得ることができるであろう。
さらに、オンラインショッピング会社と言うよりも、どっちらかといえばテクノロジー企業のAmazonは、配送の箱のデザインをシミュレーションできるデザイン・ソフトウェアとシステムを開発している。このシステムを使ってデザイナーは、箱の6面のイメージを実際に画面で3Dで見ながらデザインすることができ、広告主へのプレゼンテーションができる。
この配達の箱の広告だけではなく、Amazonは様々な顧客との接点を持つ。日本だけでも2兆5000億円以上の売り上げを持ち、5,000万人以上の顧客がいる企業である。配信などの様々な事業を展開している中で、広告事業はAmazonが最近力を入れている分野である。2021年には広告収入310億ドルを達成して、Google 、FacebookのMetaに続く、第3のデジタル広告企業となっている。
2022年からはPrime Videoで11億ドルを投資してNFLの試合放送している。この配信には広告を販売していて、これも好調だ。NFLの試合の配信により、Amazonはデジタル広告だけではなく、巨大な市場であるテレビ広告にも参入を果たした。この結果、2022年の広告の売り上げはさらに拡大することが見込まれる。テレビ広告参入は、デジタル広告企業の中では、GoogleはYouTubeで行っているがFacebookのMetaは、まだこのテレビ広告の市場には参入することができていない。Amazonは、さらにスポーツのコンテンツの獲得に動いており、配信事業と広告事業の拡大を狙っているようだ。
Amazonは、自ら持つ様々なチャネルと顧客とのタッチポイントを生かして、顧客との関係を収益化する。2023年に第三者クッキーが廃止された後は、膨大なユーザーデータを持つ企業は、GoogleとAmazonだけとなる。その膨大な顧客データを生かして、様々なメディアや端末の広告を、第1者クッキーを使って効率的な広告を販売できる企業となる。配送の箱の広告は単なる1つの事例に過ぎない。