アメリカ国防総省の極秘文書漏洩

by Shogo

アメリカ国防総省の極秘文書が漏洩してネット上に公開されている。漏洩された文書は100ページ程度もあるそうだ。ウクライナ侵略に関するロシアの動きや関連する国の状況をスパイ活動により集めた情報をもとに分析したものだ。この漏洩文書については、多くのメディが報道している。

この文書は、紙の文書が撮影された写真として、Twitter上で公開された。Twitterでは、過去には漏洩された文書については、公開を禁止する規則に基づいて削除されたが、新しいオーナーのイーロン・マスクは、Twitterに投稿して、この文章を削除しない方針を明らかにしている。彼の言う情報の民主主義とはそのようなことなのだろう。

この文書は、現在進行しているウクライナでのロシア軍の軍事作戦について詳細な情報をアメリカが把握していたことが明らかにしている。ロシア軍の攻撃のタイミングや具体的な標的について、毎日リアルタイムで、アメリカがウクライナに警告しているようだ。これはアメリカのロシア内部でのスパイ活動の浸透の程度を示すものだ。そのような情報は、取得が非常に困難なことは推測できる。

今回のこの文書の漏洩は、アメリカに、いくつかの問題を起こしている。一つは、情報共有組織であるファイブアイズの同盟国やその他の同盟国に対して、アメリカの機密情報保持の能力について疑問をもたれることだ。

それから、この文書には、韓国内部でのウクライナに使用する砲弾をアメリカに渡すかどうかの、韓国政府内部での議論の状況についての情報も含まれていた。これはたまたま韓国だけが文書に含まれているが、日本も含めて、他の同盟国もスパイ活動の対象に含まれているであろう事は推測できる。この韓国政府の情報については、アメリカが電子メールや電話などの通信傍受によって得られた情報ということが文書からわかっている。これは以前から有名なエシュロンによるものだと思われる。エドワード・スノーデンは、アメリカが違法に各国で各種通信を傍受してスパイ活動を行っていることを告発したが、それがこの文書でも証明されていると言うことになる。

しかし、今回の文書の漏洩で最大の被害を受けるのはウクライナだ。ロシアは、この文書の情報を分析して、この情報源を突き止める可能性がある。ロシア内部にアメリカへの情報提供者がいた場合には、その人物の身の危険の可能性も高い。そうでない場合でも、何らかの方法で情報の流通を制限することにより、ロシア軍の活動状況がを、アメリカが取得することを阻止するだろう。そうなると、ウクライナ軍の対応は、今までより非効率になり、戦況が変わる可能性すらある。

そのようなことを考えると、この文書を流出させて、公開した人物の意図は何であったのだろうか疑問だ。アメリカ政府の極秘文書を扱えるだけの地位にいる人物と考えるが、アメリカの状況を悪化させるだけではなく、ウクライナの防衛能力に対して著しい被害を堪える可能性がある。何を目的として公開したのだろうか。誰に対しても何の効果も生むとも思えない。

あえて、利得者を探すとすればロシアと言うことになる。だが、もしロシアに対して協力する意図があるのであれば、公開をせずにロシアにだけ情報を渡せば、そのほうが効果的であった。ロシア軍の情報がアメリカに筒抜けであることを知れば、ロシア軍は、ニセの情報アメリカに流すことによって、軍事作戦を有利に働かせることができる能性があったからだ。

第二次世界大戦中にアラン・チューリングを中心としてドイツ軍の暗号、エニグマを解読したイギリスは、解読した情報を全て使用して対応しなかった。それは、エニグマの暗号が漏れていることをドイツ軍に知らせることになるからだ。このために助けられたかもしれない犠牲者のことを考えて、悩むチューリングと言うシーンが、チューリングの映画の中であった。

ともかく、今回の情報漏洩をした人物の意図がわからないので、何とも言えないが、単に大きな騒ぎを起こしただけになっているような気がする。

さて、今日から新学期の授業が始まる。また、新しい学生との授業だ。

You may also like

1 comment

G7の「ロンリー・ハート・クラブ」 – Marginal World Catalogue 2023-07-20 - 12:24 PM

[…] アメリカ国防総省の極秘文書漏洩 0 FacebookTwitterPinterestEmail […]

Reply

Leave a Comment

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください