漫画の日米同時公開

by Shogo

アメリカの、漫画とアニメの出版社であるViz Mediaが、今週から人気漫画の翻訳版を日本の発売と同時にアプリで公開する。北米の読者は、Viz Mangaアプリで、作品をリアルタイムで楽しめるようになる。今までは、日本で公開された漫画の翻訳版が北米の読者に提供されるまで数ヶ月の時差があったが、それが解消されることになる。

この日米同時公開は、北米の読者を待たせないと言う目的もあるが、それよりも海賊版対策が大きいようだ。日本で週刊漫画雑誌は木曜日に印刷所から出荷され、月曜日に書店に並ぶ。今までは、これとほぼ同時のタイミングか場合によっては月曜日前に、スキャンされ、翻訳された海賊版が、ネット上に公開されてきたそうだ。これは、日本の出版社にとっては大きな機会損失となっていた。今回のViz Mangaアプリでの同時公開は、この問題に対応した動きのようだ。

Viz Mediaは、日本の大手出版グループの一橋グループの海外法人で、株主は小学館40%、集英社40%、小学館集英社プロダクション20%。北米で漫画とアニメの出版ビジネスを行っている。

このような対策を行わなければいけないほど、日本の漫画は大きな産業に育っているようだ。日本の漫画のアメリカでの売り上げは、2021年に5億5000万ドルに達し、2022年は9%成長したとポップカルチャーのオンラインメディアの責任者が語っている。つまり、ほぼ6億ドルの市場規模だ。

Wikipediaによれば、日本の漫画はアメリカのコミックブックとグラフィックノベル市場で2番目に大きなカテゴリであり、市場全体の27%のシェアを占めている。これに対してアメリカのスーパーヒーローコミックとグラフィックノベルの売り上げは9%しかないと言うことだ。ここからも、日本の漫画の人気の高さがよくわかる。

Viz Mangaアプリのライブラリは148作品が含まれ、現在連載が進行中のものは15作品。今回の同時公開はこの15作品が対象となる。メールViz Mediaは、Viz Mangaアプリを月額1.99ドルで提供しており、最新の3回が無料で読めて、それ以上はオンデマンド課金のようだ。

この記事を読むまでアメリカで日本の漫画が、そんなに人気があるとは知らなかった。アメリカにいたときも見たこともなかったが、専門の書店などがあったのだろう。

古くは1960年代にすでに手塚治虫の漫画がアメリカで人気になったこともあると言う。その後も多くの漫画作品がアメリカで出版されてきた。しかし、アメリカの市場に大きなインパクトを与えたのは、大友克洋の「AKIRA」だったようだ。1988年にマーベル傘下のエピックコミックスが「AKIRA」をカラー化した翻訳版を出版して、大きな話題になったそうだ。その後、日本の漫画は多くの作品が人気を呼んできた。その結果が約6億ドルと言う市場になっているのだろう。当然、この当時は日本と同じように、電話帳のように厚い紙の出版物であったわけだが、これが今ではアプリに変わっている。

このアメリカでの日本の漫画のニーズに対応して、日本の大手出版社は現地法人を設立して、日本の漫画のライセンスビジネスを行っている。ただ、一橋グループのように、自社でアプリを提供して、直接、ネットで販売まで行っていないようだ。日米同時公開も、デジタルでネット公開になったからできることだし、そもそも海賊版もネット時代以前には難しかっただろう。良くも悪くも、ネットがビジネスを変えている事例だ。

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