「ブレインライティング」と「クレージー8」

by Shogo

長い会社員生活で、数えきれないほど、ブレンストーミングセッション(ブレスト)に参加した。様々な仕事のプロセスでブレストを行ってきた。うまくいったケースもあるし、あまり良いアイディアが出ず、うまくいかなかったケースも多い。

ブレインストーミングは、発想法として使う「オズボーンのチェックリスト」の提唱者であるアレックス・F・オズボーンが名付け親だそうだ。彼は、今でも世界最大の広告会社の1つであるBBDOの創業者の1人だ。

自分で何か考えるときには、いつも「オズボーンのチェックリスト」を使っている。オズボーンのチェックリストは、1.転用、2.適合・応用、3.変更、4.拡大、5.縮小、6.代用、7.再配置、8.逆転、9.結合という9つの観点から対象を見つめ、自分の発想を刺激するものだ。これ以上優れた考え方のツールを知らない。大学で「企画力養成講座」という授業も担当しているので、これも教えている手法の一つだ。これは、グループワークで実習すると評判も良い。

ブレインストーミングは、1950年代から使われ、広告会社だけではなく、様々な産業において重要な会議法として使われている。ブレンストーミングに変わるものとしてブレインライティングもあるが、これはあまり広く使われている手法ではない。しかしながら、これも多くのメリットのある会議の手法である。ブレインライティングは、1970年代になって、ブレインストーミングの欠点を埋めるための考えられた発想会議手法である。

ブレインライティングとは、参加者がアイデアを声に出して話す代わりに、自分自身で書き留める。ブレインライティングの基本的な手順は以下の通り

  • リーダーが、取り組むべき問題提起や質問を紹介する。これは明確に定義されなければならない。
  • 各参加者に、アイデアを書き込むためのワークシートまたは付箋が渡される。
  • 参加者は、決められた時間、通常は5~10分間、黙々とアイデアを書き出す。参加者は好きなだけアイデアを出すことができる。
  • 時間が終わると、その用紙は他の参加者に回され、参加者はさらにアイデアを書き加えたり、既存のアイデアを発展させたりすることができる。
  • このプロセスは、十分な数のアイデアが生まれるまで何度も続けられる。

ブレインライティングには、口頭でのブレインストーミングにはないいくつかの利点がある。

  • 平等な参加を促す  性格や地位、コミュニケーションスキルに関係なく、誰もが平等にアイデアを提供できる。内向的な人も、外向的な人と同じようにアイデアを出すことができる。
  • 社会的抑圧の軽減  匿名でメモに書き込むプロセスは、判断に対する不安を軽減し、型にはまらないアイデアを共有することを促す。
  • より多くのアイデアを生み出す  ある研究によると、ブレインライティングはよりもはるかに多くのアイデアを生み出す。ある研究では、2.5倍ものアイデアが出たそうだ。
  • アイデアの発展  他の人のアイデアを見ることで、アイデアの改善や新たな発想につながる刺激が生まれる。
  • 実践が簡単  ブレインライティングはシンプルなルールなので、構造化されたアイデア発想法に慣れていない人でも利用しやすい。

ブレインライティングの効果を最大化するには、いくつか留意する必要がある。

  • 具体的でありながら自由形式でもあるので、明確な目的を共有する必要がある。
  • 参加意欲を高めるために、大人数のグループを4~6人の小チームに分ける。
  • 勢いをつけるために、1回5~10分のラウンドを少なくとも5回行う。
  • オンラインのホワイトボードやアイデア発想プラットフォームを使い、メモを整理する。
  • ラウンドごとに、参加者にお気に入りのアイデアを2~3個挙げてもらう
  • アイデアの評価と優先順位をつけるために、フォローアップミーティングをする

ブレインライティングは、チームやワーキンググループでアイデアを生み出すための、柔軟なアプローチだ。また、言葉によるやりとりをなくすことで、平等な参加を促し、抑制を減らすことができる。ブレインストーミングでは、一部のよく喋る人が場を独占してしまう可能性があるが、これを避けることができる。

ブレインライティングには先に述べたような欠点もあるが、生み出される質の高いアイデアの数では、従来のブレインストーミングを常に上回っているという。適切なフレームワークとリーダーの存在があれば、あらゆる業界で画期的なイノベーションとソリューションを生み出すことができると思われる。

特に、ブレインライティングの静かで協調的な進行は、調和とコンセンサスを重んじる日本の職場文化によくマッチしている。この手法は日本人の性格を尊重しながら、創造性を高めることができると思われる。

さらに、最近になって話題になったGoogleの「クレイジー8」という手法もある。クレイジー8は、迅速なアイデア生成を目的とした発想会議の手法だ。主に以下のステップで行われる。

  • 準備 参加者は一人ずつ、紙(またはスケッチブック)と筆記用具を用意。
  • 明確化  問題または課題について説明
  • タイマー設定 時間を8分に設定。この8分間で、各参加者は8つの異なるアイデアを生み出す。
  • アイデア発想  参加者は各自、紙にアイデアをスケッチ。アイデアは詳細である必要はなく、量と速さ。各アイデアに約1分を費やし、8つのアイデアを書く。
  • 共有と評価 8分が経過したら、参加者はそれぞれのアイデアをグループと共有。
  • 議論. 各アイデアを説明し、グループで議論。
  • 発展 実現可能で革新的なアイデアを選び、発展させる。

「クレイジー8」では、迅速さと柔軟性に焦点を置き、すばやく、自由に発想することが重要。質より量はブレストと同じ。会話による要素が入るのはブレインストーミングと同じ。折衷案ということだろうか。だが、違うのは、ビジュアル化を考える。スケッチや図を使ってアイデアを表現することで、より明確かつ具体的なアイデアになることだ。それとスピード感。クレイジー8は、チーム内の創造性を刺激し、新しい視点や意外なアイデアを引き出すのに効果的な手法だ。

創造性を促す手法として、「ブレインライティング」と「クレイジー8」はそれぞれ独特のアプローチを持っている。ブレーンライティングは集中と深い思考に重点を置き、クレイジー8は迅速なアイデア生成と視覚的表現を特徴とする。

どちらを選ぶべきかは、対象やメンバーによって変わる。一長一短があるからだ。 短時間でアイデアを生成する必要がある場合、クレイジー8が適している。一方、より深く考え、時間をかけてアイデアを練りたい場合はブレーンライティングはが良い選択。視覚的な表現を重視する場合はクレイジー8、書面による表現を好む場合はブレーンライティングが適している。メンバーに内向的な参加者が多い場合、ブレーンライティングがより適している。

どちらの手法も、創造的な思考を促進し、イノベーションを生み出すために有効に活用できるだろう。ブレスト一辺倒でなく、多くの方法を試してみるのが良い。

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