イーロン・マスクのX(旧Twitter)が、YouTubeに対抗するために、Amazon Fire TVやSamsung TVなど主要なスマートTV向けの動画アプリを近日中にリリースすると報じられている。Xは「ビデオファースト」のプラットフォームへと舵を切っており、ユーザーがより大画面で長尺動画を視聴できるようにすることで、YouTubeに真っ向から挑戦する構えだ。
Xの全てを網羅するアプリ、「スーパーアプリ」構想における重要な要素となるのか。XはYouTubeの牙城を崩し、動画配信サービスに食い込めるのか。
YouTubeは動画プラットフォームの王者として君臨している。米国ではYouTubeが12ヶ月連続で視聴時間トップのストリーミングサービスとなっており、スマートTVでの視聴も非常に多いのが特徴だ。一方、Xは昨年の利用率が30%減少するなど苦戦が続いている。YouTubeは圧倒的な先行者利点を持っており、Xが巻き返すのは容易ではない。現時点の情報を元にマスクのYouTube挑戦の成否を占う重要なポイントを考えてみる。
Xアプリの特徴は以下の通りだ。
- 長編動画に特化 従来のTwitterの制限を外し、最大10万文字のテキスト記事や、30分以上の長編動画を投稿できる。
- 大画面で視聴 Amazon Fire TVやSamsung TVなどの主要なスマートテレビに対応。リビングルームで、より快適な動画視聴体験を提供する。
- 多彩な収益化オプション スーパーチャットや投げ銭、広告収益など、クリエイターが収益化できる方法が豊富。
- クリエイター支援 クリエイター向けツールやコミュニティを提供し、クリエイティブ活動のサポートを行う。
つまり、YouTubeの機能に比べて大きな差別化要因があるわけではない。しかも、動画に特化したYouTubeに対し、Xはテキストベースのプラットフォームという出自があり、動画への移行には困難が予想される。また、ユーザーのYouTube視聴習慣を大きく変えるのは容易ではない。ブランド力とはそういうものだ。
イーロン・マスクの、この動画挑戦には、彼の野望と密接に関係している。彼は、Xを単なるソーシャルメディアプラットフォームではなく、情報発信、コミュニケーション、決済、エンターテイメントなど、あらゆる機能を網羅する、全てを網羅する「スーパーアプリ」へと進化させようとしていると言われている。
X動画アプリは、この野望を実現するための重要な要素だ。長編動画は、ニュース、教育、ドキュメンタリーなど、様々な分野で活用できる可能性を秘めている。さらに、スマートテレビへの対応により、Xはより多くのユーザーを獲得し、エンターテイメントプラットフォームとしての地位を確立できる可能性はある。何にでも可能性はあるからだ。
しかし、X動画アプリの成功は決して容易ではない。YouTubeは、圧倒的なユーザー数とコンテンツ量を誇り、長年にわたって動画配信サービスのトップに君臨している。XがYouTubeに対抗するためには、多くの課題がある。
- ユーザー獲得 YouTubeの牙城を崩し、多くのユーザーをXアプリに引き込む必要がある。
- コンテンツ拡充 質の高いコンテンツを充実させ、ユーザーのニーズを満たす必要がある。
- 収益化モデルの確立 クリエイターが収益を得られる仕組みを構築し、プラットフォームの持続可能性を確保する必要がある。
Xアプリが、YouTubeの牙城を崩し、動画配信サービスに食い込めるのか。この問いの答えは、まだ誰にも分からない。個人的な予想では、他の分野でも同じだが、圧倒的な王者に同じ土俵で戦って勝った事例はない。TikTokも、短尺動画として参入して成功した。だから、Xアプリは、別の切り口が必要だろう。