イーロン・マスクのGrok AI

by Shogo

Grok AIは、イーロン・マスクによって開発されたAIチャットボットだ。マスクのAIスタートアップ企業xAIが開発した人工知能(AI)モデルをベースにしている。他のAIチャットボットと同様に、Grokは、膨大な量のデータを解析・学習し、ユーザーからの質問に対して瞬時に回答することができる。特徴は、他のチャットボットが持つ一般的な回答能力に加え、より高度な会話能力と、リアルタイムのデータ処理能力にある。

Grokと他のチャットボットとの比較

Grokの最も顕著な特徴の一つは、他のチャットボット、例えばOpenAIのChatGPTと比較した際のその独自性だ。現時点のGrok-1は、ChatGPTが基にしているGPT-3.5モデルを凌駕するとされ、より複雑な質問に対しても詳細で精度の高い回答を提供する能力を持っている。

また、Grokはリアルタイムのデータにアクセスすることが可能であり、現在進行中の出来事や最新のニュースについての質問に対しても、最新の情報を基にした回答をすることができる。これは、GPT-3.5をベースにする無料版のChatGPTが、その学習データとインターネットアクセスの機能がないために、最新情報を回答できないという限界を超えている。もちろん、有料版のGTP-4のChatGPT Plusは最新情報に対応している。

Grokの特徴としては、イーロン・マスクは、Grokを「最大限の真実を追求するAI」と評しており、従来のチャットボットが政治的な正しさや中立性に重点を置く傾向にあるのに対し、Grokはより自由な表現と情報の提供を目指している。この点が、Grokは他のチャットボットと比べてユニークな存在にしている。イーロン・マスク風の味付けがされているというようなことだ。他のチャットボットが備えている、AIの回答に対するガードレールと呼ばれる制限も少ないのだろう。

Grokの特徴と機能

Grok-1は、Grokの核となる機械学習モデルだ。このモデルは、数千のGPUを利用して開発され、Webからのデータや、xAIの「AIチューター」と呼ばれる人間アシスタントからのフィードバックを活用して訓練されている。Grok-1は、従来の大規模言語モデル、例えばMetaのLlama 2やOpenAIのGPT-3.5を上回る性能を持つと、xAIは主張している。

そして、3月末に発表されたGrok-1.5は、GTP-4と同等の能力があるとされてている。これが事実なら、ChatGPTやGeminiの強力なライバルになるかもしれない。Grok-1.5は、Xを通じて近日中に使用が開始されるようだ。

リアルタイムデータアクセス能力

Grokの目立つ特徴の一つは、リアルタイムのデータにアクセスできる能力だ。これにより、Grokは最新のニュースや出来事についての情報を、他のチャットボットが提供できないほど詳細に提供できる。これには、Xへの様々な投稿データを読み込んで活用していることの反映でもある。たとえば、「AIの分野で今何が起こっているか」という質問に対して、Grokは最新の情報を元に回答を組み立てることができる。ただし、誤情報のリスクも、結果として高くなることも指摘しておかなければいけないだろう。

RLHFによる微調整プロセス

RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback、人間のフィードバックからの強化学習)は、Grokの微調整において重要な役割を果たしている。このプロセスでは、まず生成モデルを訓練し、その後追加情報を収集して「報酬」モデルを訓練する。最終的には、報酬モデルを用いて生成モデルを強化学習させる。RLHFはAIモデルに指示に従うことを「教える」のに効果的だが、完璧ではない。Grokもまた、時に誤った情報や偽のタイムラインを提供することがある。だが、これは、すべてのAIチャットボットに共通する弱点だ。

Grokの利用方法

Grokにアクセスするためには、まずXのアカウントを持っている必要がある。その上で、XのPremium+プランに登録することが必須だ。このプランは月額1,960円で提供されており、Xの最も高価なサブスクリプションだ。Premium+プランに加入すると、Groxだけでなく、For YouやFollowingフィード内の全ての広告が削除されるだけでなく、投稿に対して報酬を得たり、ファンに対してサブスクリプションを提供するためのハブへのアクセスも得られる。

ユーザーインターフェースと機能

GrokはXのWeb版およびiOS、Androidアプリのサイドメニューからアクセスできる。また、Xのモバイルアプリの下部メニューに追加することで、より迅速にアクセスすることも可能。ChatGPTとは異なり、Grokは独立したアプリケーションとして存在せず、Xのプラットフォームを介してのみ利用できる。これは、イーロン・マスクの目指すXのスーパーアプリ化の一環なのかもしれない。

Grokのユニークな特性

Grokには二つのモードがある。「Fun」モードと「Regular」モードだ。これらのモードはGrokの回答の内容、トーンとスタイルを調整している。

Funモードでは、Grokはよりエッジの効いた回答をする。ダグラス・アダムスの「銀河ヒッチハイク・ガイド」にインスパイアされた、ユーモラスで少し反逆的なトーンを持つ。Funモードが有効になっている場合、Grokは下品な言葉遣いや、ChatGPTでは聞くことのできない汚い言葉を使うことがある。さらに、GrokはユーザーのX投稿履歴に基づいて回答するために、ユーザーにとっても興味深い内容になる可能性がある。

Regularでは、Grokの応答は、他のチャットボットのように、より一般的な礼儀正しいものになる。このモードでも依然として誤った情報や日付を回答することがあるが、Funモードほど極端ではない。

政治的見解と社会問題への取り組み

Grokは、社会正義、気候変動、トランスジェンダーのアイデンティティについての質問に対して、進歩的な回答を提供する傾向があるように訓練されているようだ。研究者の一人は、Grokの回答が全体として左派かつリバタリアンであることを発見し、これはChatGPTの回答よりもさらにそうであると述べている。しかし、イーロン・マスクはGrokを政治的に中立に近づけることを約束している。このために、この傾向は消えてゆくのかもしれない。

Grokの限界と課題

Grokのトレーニングには、多量の未検査ラベルデータが用いられている。未検査ラベルデータは、事前に人間によるカテゴリー分けやラベリングが行われていないデータのことだ。このアプローチは、大規模な情報量を扱えるという利点があるが、同時にいくつかの重要な限界や問題も伴う。

未検査ラベルデータは、その性質上、誤った情報や偏見を含む可能性が高くなる。このため、Grokが生成する回答の正確性や信頼性に影響を及ぼす可能性がある。これが、偏見やヘイトスピーチを生み出す可能性が高くなり、他のAIチャットボットよりも、そのリスクは高いと考えられる。

また、人間が事前に整理・分類していないデータは、コンテキストやニュアンスの理解が不完全になりがちだ。この結果、Grokは曖昧な、あるいは不適切な回答を提供するリスクも高い。

すべてのAIチャットボットに共通する課題としては、正確性と透明性に関する問題や誤情報を回答をすることがある。Grokも同様だ。

Grokの今後

発表されたGrok- 1.5は、既存のモデルをさらに改良し、その機能を拡張することを目指している。このアップデートでは、GPT-4と同等の能力があるとされていることに加え、Grok -1.5では、より高度なコンテキスト能力が加わり、Grokはより長いスレッドや返信を要約し、ユーザーが質問する内容を理解する機能を持つようになるようだ。これは、Grok-1.5のコンテキスト長は128kトークンと発表されており、29kトークンのGTP-4を凌駕する。Grok-1.5は、他のAIチャットボットよりはるかに長いコンテキストで回答を続けることが可能のようだ。

しかし、現時点では、Grokはテキストベースの応答に限定されている。これは、OpenAIなどが、マルチモーダルに対応して、テキストだけでなく画像、さらに動画に対応を始めていることに比べれば弱い。今後は、Grokも、単なるテキスト応答ツールから、より多様なメディア形式を扱えるAIプラットフォームへと進化することをイーロン・マスクは約束している。

現在のGrokは、リアルタイムデータアクセスと高度な対話能力を備えたユニークなAIチャットボットとして注目されている。今後予定されているアップデートが事実なら、Grokは情報処理、コンテンツ生成、クリエイティブな表現の分野で更なる可能性を秘めている。これがどうなろうとも、やはり、Grokの最大の強みは、良きにつけ悪きにつけ、Xのリアルタイムデータを読み込んで回答することができることだ。

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