英国は、政府が発行するデジタルウォレットとともに、今年後半にデジタル運転免許証をリリースする予定と報道された。これにより、スマホを使って、運転免許証としてだけではなく、年齢制限のあるアイテムをオンラインや対面で購入する際に、年齢を簡単に証明できるようになる。
これは、今年後半に発売されるUKデジタルウォレットで利用できる最初のデジタル文書の1つだ。モバイルのウォレットには、退役軍人カードなど政府が発行するその他のすべての資格を証明できるようになるという。ただし、これらのデジタルバージョンの多くは、2027年末までには利用できないようだ。
日本では、2025年3月24日から「マイナ免許証」と呼ばれる運転免許証とマイナンバーカードの一体化が正式に運用開始される予定だ。この取り組みは、デジタル社会推進の一環として進められており、デジタル運転免許証は実現する。と言っても、これはマイナカードという物理カードでの運用だ。
マイナ免許証は、従来の運転免許証情報をマイナンバーカードのICチップに記録する仕組みだ。これにより、物理的な免許証を持ち歩かずに運転資格を証明できるようになる。この制度は任意であり、希望者のみが利用できる。
日本の3つの運転免許証保有形態
- 従来の運転免許証のみを使用
- マイナ免許証のみを使用
- マイナ免許証と従来の運転免許証を併用
政府は、マイナ免許証導入後、スマートフォンを利用した「モバイル運転免許証」の実現も視野に入れているそうだ。この計画は、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の中で言及されており、一体化後に極力早期の実現を目指すとされている。これにより、利便性向上が期待される。だが、「視野に入れている」だけで、実現は遠い未来なのだろう。
世界各国におけるデジタル運転免許証の導入状況
モバイル・デジタル運転免許証(mDL)は、世界各国で急速に普及が進んでおり、政府が身分証明システムの近代化を目指す中の重要アイテムだ。これらの免許証はスマートフォン上で管理され、従来の物理的なIDカードに代わる安全かつ便利な免許証となる。
デンマーク
デンマークでは2020年11月に独自アプリを通じてデジタル運転免許証(mDL)が導入された。この免許証は物理的な免許証と同等の効力を持つが、現在は国内でのみ有効。QRコードを用いた認証機能が備わっているが、ISO/IEC 18013-5規格(モバイル運転免許証の国際標準)にはまだ準拠していない。
アイスランド
アイスランドでは2020年7月にmDLが導入された。市民はオンラインで申請し、iOSではpkpassファイルとして、Androidではサードパーティアプリを通じて使用できる。この免許証は国内での公式手続きや投票などにも利用可能。
ポルトガルとフランス
ポルトガルとフランスでは、デジタル運転免許証が法的に物理的なIDと同等とされている。ポルトガルでは「id.gov wallet」アプリに統合されており、フランスでは「France Identité」アプリを通じて提供されている。これらはデジタルIDの一環として開発されており、自動車保険証明書など他の機能への拡張も予定されている。
オーストリア
オーストリアは2022年10月に「eAusweise」アプリを導入し、その中でデジタル運転免許証も利用可能になった。このアプリはオフラインでも使用でき、交通検問やその他のサービスで公式な身分証明として機能。導入後6か月以内に30万件以上が有効化された。
欧州連合(EU)
EUはデジタル運転免許証を「欧州デジタルIDウォレット」計画に統合することを提案している。加盟国は今後5年以内にmDLを標準的な発行形式とする予定だが、物理的な免許証も引き続き選択可能。また、加盟国内での相互運用性確保とデータ保護措置が進められている。
韓国
韓国では「PASS」アプリを通じてmDLシステムが運用されている。このアプリはすでに3,000万人以上のユーザーがおり、通信事業者や政府機関との協力で開発された。ブロックチェーン技術を活用してセキュリティを強化しており、スクリーンショットによる情報漏洩も防止されている。
香港
香港では2025年に「iAM Smart」アプリや電子ライセンスポータルを通じてmDLが導入される予定。このシステムは物理的な免許証と法的に同等となり、身分確認プロセスの効率化を目指している。
アメリカ
アメリカではいくつかの州がmDLを採用または試験運用。アリゾナ州やコロラド州などでは「myColorado」や「LA Wallet」といった州独自のアプリでmDLが利用可能。また、一部空港では米国運輸保安局(TSA)がセキュリティチェック時にmDLを受け入れている。
ルイジアナ州やユタ州などではISO規格準拠のシステムが採用されており、他州との相互運用性確保が進められている。つまり、アメリカでは、まだあまり進んでいないということのようだ。
オーストラリア
オーストラリアはmDL導入しており、ニューサウスウェールズ州(NSW)では試験運用後に州全域で展開されている。このシステムはブロックチェーン技術による高度なセキュリティ機能を備えており、アプリ内で個人情報の更新も可能。まだ、全国レベルではないようだ。
グローバル規格と課題
ISO/IEC 18013-5規格の採用は、世界中でmDLの相互運用性とセキュリティを確保する上で重要な役割を果たしている。この規格は暗号化プロトコルやユーザー認証方法など技術仕様を定めている。国際免許や地続きの国のことを考えると、各国・地域間で異なる規格による相互運用は必須だ。一刻も早く、各国がmDLの規格を採用することが望まれる。これが、進めば、運転免許を持たない人にも発行し、身分証明書として機能させることで、パスポートが不要になるかもしれない。
それにして、日本の対応は遅れている。運転免許証という物理カードが、マイナカードという別の物理カードになっただけだ。あまりにも世界と比べて遅れている。モバイル運転免許証は、いつになるのだろうか。