縦型と横型

by Shogo

Xは、縦型ビデオのフィードを米国でリリースしてから、わずか数日後に、世界のユーザーにも展開を始めたようだ。すでに、インド、オーストラリア、一部のヨーロッパ市場などに登場したと報じられている。今のところ、iOSだけで、Androidユーザーはもう少し待つ必要があるという。日本では、アカウントはあるが滅多に開かないのでよく分からないが、iPhoneで見ても、おまの時点では、そのようなボタンはなさそうだ。

個人的には古い人間なので、写真と言えば、横型と思っており、縦型の写真はほとんど撮らない。これについて考えてみると、幾つかの理由があるようだ。写真は、19世紀に発明されて以来、主に横型で撮影されてきた。これは、人間の視覚特性、カメラの構造、そして文化的背景など、様々な要因が影響している。

1. 人間の視野との親和性

人間の目は横に並んでいるため、人は世界を横長に見ている。横型写真は、この人間の視野に近いアスペクト比であるため、より自然に見える。また、風景写真や集合写真など、広い範囲を写したい場合にも横長の写真が適している。さらに、表現として考えると。横構図では視線が左右に動きやすく、画面外へ視線が流れるような効果がある。これにより、写真の中だけでなく、その先にも広がりが続いているような印象を与えることができる。

これらの特徴から、横型写真は空間の広さやスケール感を表現する際に非常に適した構図だ。一方で、高さや奥行きを強調したい場合には縦構図が有効であり、それぞれの目的に応じた使い分けもされている。縦型写真と言えば、後期の中平卓馬が有名で、縦型写真を2枚並べて作品を発表していた。2枚で1作品と考えると、横型とも言えるが。

2. カメラの構造

カメラは、フィルムのサイズやレンズの構造上、正方形型と横型に作られていた。この伝統的なカメラの形状が、写真の横型という文化を定着させたと考えられる。デジタルカメラでも、これは踏襲されている。さらに、カメラを横向きに持つ方が安定し、操作しやすいように設計されているものが多く、横型撮影が自然と多くなっている。

3. 文化的背景

映画やテレビといった映像メディアは、横長の画面で制作されてきた。これらの影響で、写真は横長の方が「かっこいい」「本格的」というイメージを持つ人が増え、横型写真が主流となったと考えられる。あるいは、これは逆かもしれない。写真が横型が主流だったので、映像メディアも横型になったのかもしれない。

4. 視覚的な安定感

横長の写真は、縦長の写真に比べて安定感があるのは感覚的に理解できる。これは、横長の形が地面と平行であるため、視覚的に安定して見えるからだろう。水平線や地平線など、自然界に存在する水平なラインを強調することで、写真に安定感を与えることができる。

5. 情報量の多さ

横型写真は、縦型の写真に比べて、より多くの情報を写すことができる。左右に広がる空間を有効活用することで、被写体だけでなく、背景や周囲の状況をより多く写真に収めることができるからだ。このために、横型写真が一般的だったと考えられる。

スマホ後の変化

しかし、スマホが普及したことで、写真や映像の撮影・視聴スタイルは大きく変化した。スマホは縦向きに持つことが多いため、自然と縦型の写真や映像が増加している。特に、TikTokやInstagram Reelsなど、縦型動画をメインとしたSNS が、縦型コンテンツの需要を急増させている。今回のXの縦型ビデオの導入も、TikTokの禁止の可能性に乗っかっているという点もあるが、写真や動画の横から縦への変化を捉えたものだ。

縦型写真や映像が増えている背景には、スマホの操作性のために縦型が自然ということ以外にも、縦型写真は、横長の写真に比べて、よりダイナミックで印象的な表現ができることも理由にあるかもしれない。まして、人物のポートレートは以前より縦型が多用されてきた。これは、人物が被写体として縦型だからだが、スマホの時代でもポートレートは縦型が自然だ。

縦型写真や映像の普及は、一時的な流行ではなく、スマホを中心としたデジタル社会における新たなスタンダードとなってゆくのだろう。だが、横型写真や映像がなくなるわけではない。少なくとも私は横型写真しか撮らない。横型は、風景など、横に広がりを持つ被写体を表現するのに適しているからだ。また、テレビや映画のような大画面での視聴にも向いているからだ。

写真や映像は、時代とともに進化を続けている。フランスのニエプス兄弟がカメラ・オブスキュラを作って来年でちょうど200年。スマホという新たな技術の進化によって、写真や映像は、新しい段階に入り、今後の人類は写真や映像が横型という感覚を持たなくなるのだろうか。

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