DeepSeekパニック

by Shogo

DeepSeekは、この週末に全世界のアプリストアで一位を獲得し、ChatGPTを超える勢いを見せている。

2025年1月末に突如としてアプリストアのランキングで首位に躍り出て以来、その勢いはとどまるところを知らない。DeepSeekのモバイルアプリは、iOS App Storeでは米国を含む52カ国、Google Playでも多くの国でランキング上位に位置し、わずか数日で数百万ダウンロードを達成した。実際に使ってみると、ChatGPTやGeminiに遜色ない。文章生成では、むしろ早く感じる。

DeepSeekの成功の背景には、新たなAIモデルの実装があると専門家も考えており、その効率性と経済性はOpenAIを含むAI開発会社を脅かすポテンシャルを示している。これが、これまでの(あるいはアメリカでの)高価なAI開発に疑念を投げかけることになった。とくに、Nvidiaの株価が大きく下落したことは、大きな衝撃だ。約60兆円も時価総額が下落している。

DeepSeekは、2023年に中国杭州で設立されたAI研究所であり、オープンソースの大規模言語モデル(LLM)の開発を主軸としている。創業者の梁文峰氏は、AIを活用したヘッジファンド「High-Flyer」のCEOであり、効率的なAIモデル開発に注力してきた。

DeepSeekの製品は、競合するOpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなどの高性能モデルに匹敵する性能を持ち、あるいはそれ以上の性能を有しながらも、開発コストが桁違いに低い点にあるそうだ。今までの費用は600万ドルで開発費用が少ないMetaの十分の一だそうだ。きっとOpenAIなどに比べると何桁も違う。

最新モデル「DeepSeek-R1」や「DeepSeek-V3」は、数学的推論やプログラミングタスクにおいて優れた性能を示し、多くのベンチマークで競合他社を凌駕している。DeepSeekの開発チームは、限られた予算と、米国による輸出規制で入手困難な最先端AIチップという制約の中で、独自の革新的な技術によって高性能なAIモデルの開発に成功した。

報道によると、DeepSeekの躍進を支えるのは、「R1」と呼ばれる推論モデルと、「Janus-Pro」と呼ばれるマルチモーダルモデルだ。

DeepSeek R1  

OpenAIの「o1」モデルに匹敵する性能を持つとされる推論モデル。複雑な問題に対して、様々なアプローチを検討し、最適な解決策を選択することができる。その思考過程をユーザーに説明することも可能だという。R1は特にコーディングや数学の分野で優れた能力を発揮する。

Janus-Pro

 画像生成が可能なマルチモーダルモデル。OpenAIのDALL-E 3やStable Diffusionを凌駕する性能を持つとされ、GenEvalやDPG-Benchといったベンチマークで高いスコアを記録した。

DeepSeekはこれらのモデルをオープンソースとして公開しており、世界中の開発者が自由に利用することができる。低コストで高性能なAIモデルが誰でも利用可能になったことで、AI開発の敷居は大きく下がり、AI技術の民主化が加速する可能性がある。

DeepSeekパニック

DeepSeekの急成長は、「DeepSeekパニック」と呼ばれる経済的・社会的影響を引き起こした。

株式市場への衝撃

DeepSeekの成功は、Nvidiaなどの主要AI関連企業の株価急落を招いた。Nvidiaは一時13%安となり、AI市場全体で約71兆円もの時価総額が消失した。米国テクノロジー企業は、この新興企業による価格競争圧力に直面し、大規模なコスト見直しを迫られる。

価格競争の激化

DeepSeekが提供する低価格APIサービスは、AI業界全体の価格デフレを引き起こしつつある。この動きは、今までのAI産業に投資された巨額な資金が価値を失うことを意味する。

セキュリティ問題

また、低価格でオープンソースのAIが普及することで、今まで予想されてきた、「フェイクニュース生成」「ディープフェイク」「プライバシー侵害」など悪用リスクがさらに現実化する。さらに、TikTokと同様に、中国政府との関係やデータプライバシーへの懸念が指摘されており、利用には慎重さが求められる場面もあるだろう。

DeepSeekは、米中間のAI開発競争を激化させるだろう。AI技術の覇権を巡る争いは、今後の国際社会に大きな影響を与えることは確実だ。AI技術の新たな可能性を示す革新的な技術が中国で誕生したことで、AI産業そのものの構造や収益性を大きく変えることが予想される。

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