インターネット広告は、AI時代の到来で、大きな転換期を迎えようとしている。Perplexityは広告を導入しているし、OpenAIも検討中だ。GoogleのAIモデル「Gemini」にも広告が導入されると発表された。
Googleの広告事業は、長らくインターネット広告市場を牽引してきた。検索連動型広告は祖業でり、Googleの広告事業の主要な柱だ。しかし、近年、検索連動型広告も含めて広告事業の成長に陰りが見え始めている。2023年以降、四半期ごとの収益成長率は鈍化している。この理由がChatGPTなのか、他に理由があるか分からない。
多くのテクノロジー企業は、AI時代を迎えて、AIの開発には莫大な費用がかかっている。特に、Geminiのような大規模なモデルのトレーニングには、高度な技術と膨大なコンピューター資源が必要だ。Googleは、AI開発費用の回収と新たな収益源の確保を目指し、Geminiへの広告導入に踏み切ったと考えられる。
Googleのスンダー・ピチャイCEOは、Gemini広告の導入にあたり、「ユーザーエクスペリエンスを最優先にする」と強調している。広告がユーザーの体験を損なわないよう、慎重に設計されることが予想されるが、広告が入ることが使用体験を多少とも損なう可能性はある。
Gemini広告は、2025年の導入は見送られ、まずは無料版と有料版のGeminiの強化に注力するとのことだ。広告の具体的な形式やターゲティング方法については、まだ詳細は明らかにされていないが、Geminiのマルチモーダルな特性を生かした、革新的な広告体験が提供される可能性がある。これは、なんと取り繕っても否定しようのない事実だ。
既存の検索広告への影響
Googleはすでに、AI Overviews(AIによる検索結果の要約)に広告を導入している。この広告は、従来の検索広告と同程度の収益率を上げていることが報告されており、Gemini広告にも同様の効果が期待される。
Gemini広告の導入は、既存の検索広告を代替するのではなく、補完的な役割を果たすとGoogle は考えているようだ。Geminiの高度な自然言語処理能力を活用することで、より関連性の高い広告をユーザーに届けることが可能になり、高い広告効果に繋がるとGoogleは言っている。しかし、これは事実だろうか。
Geminiと従来のネット広告の違いはいくつかある。
1. マルチモーダルAIによるデータ解析能力
従来のネット広告は主にテキストやクリックデータなど単一モードのデータに依存していた。一方、Google GeminiはマルチモーダルAIを活用し、テキスト、画像、音声、動画など多様な形式のデータを統合的に解析する。これにより、ユーザーの行動や意図をより深く理解し、広告ターゲティングの精度を大幅に向上させるかもしれない。
2. リアルタイムの最適化
従来の広告キャンペーンでは、パフォーマンスデータを収集・分析し、その後手動で調整を行う必要がある。しかしGeminiは、リアルタイムでキャンペーンパフォーマンスを監視し、自動的にクリエイティブや入札戦略を調整する。この自動化は効率性を高めるだけでなく、結果的に高いROIを実現する。
3. ハイパーパーソナライゼーション
Geminiはユーザーごとの興味関心や行動履歴に基づき、個別化された広告体験を提供できる。この「ハイパーパーソナライゼーション」は、単なるターゲット広告ではなく、ユーザーとの深い関係構築を可能にするという。これにより、クリック率やコンバージョン率が向上するだけでなく、ブランドロイヤルティも強化されるとGoogleは考えている。
4. 予測分析と先見的マーケティング
Geminiは予測分析機能を備え、市場トレンドや消費者行動の変化を事前に察知することができる。これにより、広告主は反応的な戦略ではなく、先んじた戦略を採用できるようになるという。ただし、この知見がどのように広告主に与えられるか明らかにされていない。
Geminiによる今後のネット広告への影響も重大な問題だ。
1. 広告コストの増加
Geminiによるターゲティング精度向上は競争を激化させ、一部業界ではリード獲得コスト(CPL)が大幅に増加する可能性はある。このため、中小企業など一部の広告主にとって負担が増えるだろう。
2. オーガニックトラフィックへの影響
Geminiが検索結果ページ内で直接回答を提供することで、一部ウェブサイトへのオーガニックトラフィックが減少する可能性がある。これにより、広告に依存しない、中小企業や個人事業主のSEO戦略にも大きな影響が及ぶだろう。
Google Geminiの広告導入は、ネット広告の未来を大きく左右するかもしれない。Gemini広告は、広告主にとっても新たな機会をもたらし、AIを活用した高度なターゲティングや多様な広告フォーマットを通じて、より効果的な広告キャンペーンを展開することが可能になるだろう。ただし、広告の効果を担保する利用数やユーザー数がどうなるかが、それ以前の問題としてある。それを考えると、導入はもう少し先になるのではないだろうか。