Xが、AIアシスタント「Grok」を活用したAI生成広告の導入を発表した。これは、Xが直面する広告主離れという課題を克服し、広告主を再び引き付けるための戦略的な動きのようだ。
2022年のマスク氏による買収以降、Xは広告主の撤退という深刻な問題に直面してきた。その主な理由は、コンテンツモデレーションに対する懸念、つまり、不適切なコンテンツの隣に広告が表示されるリスクだ。どの広告主もヘイトスピーチのそばに広告を掲載したくない。これにより、大手ブランドが広告出稿を控え、Xの広告収入は大幅に減少した。
具体的な数字として、MediaRadarの推定によると、Xの米国における2024年の広告収入は約14億ドルで、前年比28％減少している。さらに、Xは広告ボイコットを企てたとされる企業を訴訟するなど、広告主との関係が必ずしも良好とは言えない。
このような状況下で、XがAI生成広告を導入した背景には、いくつかの目的が考えられる。
広告作成の効率化と自動化
まず、Grokを活用することで、広告主はウェブサイトのURLを入力するだけで、広告コピー、画像、CTA（行動喚起）の見出しを自動生成できる。これにより、広告作成にかかる時間と手間を大幅に削減し、広告主の負担を軽減する。
「Prefill with Grok」機能は、広告主がクリエイティブを自動生成できるようにする。
また、「Analyze Campaign with Grok」機能は、キャンペーンのパフォーマンス測定を自動化し、ターゲティングやクリエイティブの最適化を支援する。
広告主の獲得と維持
AIによる自動化は、特に中小規模の広告主にとって魅力的だ。広告作成のハードルを下げることで、新たな広告主の獲得を目指す。また、キャンペーン分析の自動化により、広告主は効果的な広告運用が可能となり、継続的な利用を促す。
Grokの活用とプラットフォームの進化
Grokを広告生成に活用することで、XはAI技術の応用範囲を広げ、プラットフォームの価値を高めようとしている。Xは、動画フォーマットの強化や決済サービスの導入など、プラットフォームの多角化を進めており、AI生成広告もその一環と言えるだろう。
だが、それでも問題はある。AIが生成する広告が、不適切なコンテンツと関連付けられないようにしなければならない。そのために、コンテンツモデレーションの強化と、AIによるコンテンツ分析の精度向上が求められる。
さらに、AIが生成する広告の品質がどうかだ。広告として品質を担保しながらも、さらに広告主が自由に編集できる機能を提供することで、品質のばらつきを抑える必要がある。広告として出来が良くなければ、広告主は使わないだろう。
Xは、AI生成広告を導入することで、広告ビジネスの再建を目指しているようだが、そのためには、コンテンツモデレーションだど、広告主との信頼感を取り戻す必要がある。
