ファーストパーティデータ活用

by Shogo

マーケティングの世界は、変革期を迎えている。これまでは、消費者のネット上の行動を追跡し、パーソナライズされた広告を配信するために、ウェブサイト訪問者の行動を追跡する仕組みである「クッキー」が広く利用されてきたがが、その利用が完全に廃止される予定だ。

今後のクッキー無き時代には、広告予算をファーストパーティデータの活用に焦点を移すべきという意見が大勢をしめている。そうでなければ、マスメディアの時代と同じように、マーケティングファネル上部の一般の消費者に大量の広告をばらまくことに戻ってしまうからだ。

ファーストパーティデータとは?

ファーストパーティデータ(1st Party Data)は、企業が自社で収集・保有するデータのことだ。CRMシステム、ロイヤリティプログラム、ウェブサイトの閲覧履歴、広告への反応などが含まれる。顧客との直接的な関係に基づいて収集されるため、信頼性が高く、精度の高いデータだ。

セカンドパーティデータ(2nd Party Data)は、 自社では保有していないものの、パートナー企業との直接的な関係を通じてアクセスできるデータのことだ。例えば、消費財メーカーが小売業者と協力して、自社製品の購買パターンを把握する場合などが該当する。

サードパーティデータ(3rd Party Data)は、 企業が自社以外から収集・集計したデータのことだ。人口統計情報、閲覧行動、購買履歴、ソーシャルメディアの活動などが含まれる。データブローカーが提供するデータなどが該当する。

サードパーティデータの終焉

これまでマーケティングにおいて広く活用されてきたサードパーティデータだが、近年、その利用は厳しく制限される傾向にある。主な理由は以下の通りだ。

プライバシー規制の強化  GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)、日本の改正個人情報保護法など、世界中で個人情報保護に関する規制が強化されている。これらの規制により、消費者の同意なしに個人情報を収集・利用することが難しくなった。

データの精度と信頼性の問題  サードパーティデータは、さまざまなソースから収集されるため、品質や鮮度が大きく異なる場合がある。不正確または古い情報に基づいてターゲティングを行うと、効果的なマーケティングキャンペーンを実施できない。

コストの増大  高品質なサードパーティデータへのアクセスコストは、年々増加している。データドリブンマーケティングの需要が高まるにつれて、信頼できるプロバイダーからデータを取得するコストが大幅に上昇している。

ブラウザやOSによる制限  ユーザーのプライバシー保護の観点から、Apple(iOS)、Firefox、Google(Chrome)などの主要なブラウザやOSは、サードパーティクッキーの利用を制限してきた。特にGoogleも、Chromeブラウザでのサードパーティクッキーのサポートを完全に廃止する計画を発表した。

これらの課題により、企業はサードパーティデータへの依存から脱却し、ファーストパーティデータを活用したマーケティング戦略への転換を迫られている。

ファーストパーティデータの重要性

ファーストパーティデータは、企業が顧客との直接的な関係に基づいて収集するため、信頼性が高く、精度の高いデータだ。ファーストパーティデータを活用することで、企業は多くのメリットを得られる。

まず、顧客の行動、好み、購買パターンなど、詳細な情報を把握し、より正確な顧客プロファイルを構築できることが挙げられる。その結果、 顧客一人ひとりに合わせた最適なタイミングで、最適なメッセージを届けられる。パーソナライズされたマーケティングキャンペーンは、エンゲージメント、コンバージョン率、顧客ロイヤルティの向上に貢献する。

さらに、顧客データを分析することで、顧客の課題を特定し、ニーズを予測し、関連性の高い情報や提案を提供できる。これにより、顧客満足度を高め、長期的な関係を構築できる。

また、競争優位性の確立に寄与することが重要だ。自社独自のデータ資産を活用することで、競合他社との差別化を図り、独自の価値提案を生み出すことができるからだ。

実際に多くの企業は、ファーストパーティデータの活用に積極的だ。Netflixは、視聴履歴、評価、ユーザーの反応などのファーストパーティデータを活用し、パーソナライズされたコンテンツレコメンデーションを提供している。また、Spotifyも同様に、聴取履歴、ユーザーの好み、プレイリスト作成などのファーストパーティデータを活用し、パーソナライズされた音楽レコメンデーションを提供している

クッキーの廃止やプライバシー規制の強化など、マーケティング環境は大きく変化している。このような状況下で、企業が競争力を維持し、成長を続けるためには、顧客から積極的に集めたファーストパーティデータの活用が不可欠となるだろう。

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