Signalが、イエメンへの攻撃計画の議論がグループチャットで共有され、そのグループにThe Atlanticの編集者が含まれていたことから、ワシントンは大騒ぎになっている。これは、ヘグセス米国国防長官が誤って、政府外のメディアの編集者を含むグループチャットに追加し、機密情報が漏洩した事件だ。
Signalは、オープンソースで完全暗号化されたメッセージングサービスだ。このアプリは、ユーザー間のコミュニケーションをインターネット経由で暗号化し、プライバシーを保護することを目的としている。安全だからという理由で、攻撃計画の議論に使ったのだろうが、このような情報セキュリティ事故でよくあるように、人為的なミスで、政府外の人物が含まれてしまっていたということのようだ。つまり、不適切な使用方法が原因であり、Signal自体の安全性には直接関係はない。
Signalは非営利団体であるSignal Foundationによって運営されており、広告やトラッキングを行わず、ユーザーデータを収集しない点が特徴だ。Signalが提供する主要な機能は以下の通り。
1. エンドツーエンド暗号化
Signalは、メッセージや通話をデフォルトでエンドツーエンド暗号化。この技術により、送信者と受信者以外の第三者が通信内容を確認することは不可能。Signal独自の暗号化プロトコル(Signal Protocol)は、安全性が高く評価されている。
2. 広告やトラッキングなし
他のメッセージングアプリとは異なり、Signalは広告やマーケティングメッセージを表示せず、ユーザーの行動を追跡しない。この点がプライバシー重視のユーザーに支持される理由の一つだ。
3. 多様なプラットフォームで利用可能
SignalはWindows、MacOS、Linux、iOS、Androidなど、多くのプラットフォームで利用できる。これにより、どんなデバイスでも簡単にアクセス可能。また、Wi-Fi接続があれば国際的にも使用できる。
4. 消えるメッセージ機能
一定時間後にメッセージを自動的に削除する「消えるメッセージ」機能がある。これにより、特定の情報が長期間保存されるリスクを軽減できる。
5. 大規模なグループチャット
Signalでは最大1,000人まで参加可能なグループチャットを作成できる。管理者は参加者の追加や削除、メッセージ送信権限などを管理できる。
6. 読み取り通知と入力インジケーター
メッセージが読まれたかどうかや返信が入力されているかを確認できる機能がある。これらは他のアプリでも利用可能だが、Signalではデフォルトで有効になっている。
7. メディア共有機能
写真やGIFファイルだけでなく、連絡先情報や位置情報も共有可能。また、一部のデジタル通貨の支払い情報も送信。
ただし、一部ではハッキングリスクについて懸念されているようだ。特に「リンクされたデバイス」機能が悪用される可能性が指摘されている。しかし、この問題に対してSignalは迅速に対応し、新たな安全策を導入したという。
Signalは、今回、大きな話題になったことから利用者が増える可能性が高い。日本ではLINEだから使う相手がいないが、使ってみたいと思った。他のアプリとの比較は以下の通り。
特徴 | LINE | Signal | Telegram | |
暗号化 | エンドツーエンド暗号化(Letter Sealing機能、50人以下のチャットに適用) | 常時エンドツーエンド暗号化 | 常時エンドツーエンド暗号化(Signal Protocol使用) | 一部暗号化(秘密チャットのみエンドツーエンド暗号化) |
データ収集 | 電話番号、利用状況データ、広告目的のデータ収集 | 最小限(電話番号のみ) | 電話番号、連絡先、メタデータなど広範囲 | 電話番号、連絡先、利用状況データ |
オープンソース | 一部公開(暗号化プロトコルなど) | 完全公開 | 一部公開 | 一部公開 |
消えるメッセージ機能 | 利用可能(一定時間後に自動削除) | 利用可能(30秒~4週間で設定可能) | 利用可能(一定時間後に削除設定可能) | 利用可能(一定時間後に削除設定可能) |
グループチャット機能 | 最大500人まで参加可能 | 最大1,000人まで参加可能 | 最大256人まで参加可能 | 最大200,000人まで参加可能 |
マルチプラットフォーム対応 | iOS、Android、Windows、MacOSなど幅広く対応 | iOS、Android、Windows、MacOSなど幅広く対応 | iOS、Android、Windows、MacOSなど幅広く対応 | iOS、Android、Windows、MacOSなど幅広く対応 |
追加機能 | スタンプ・絵文字、多彩なテーマ設定、LINE Payによる決済機能やショッピング機能 | シンプルなメッセージングと通話機能に特化 | ステータス更新やビジネス向けAPI | チャンネル作成、大規模なグループ管理、自動ボット機能 |
広告表示 | あり(ターゲティング広告を含む) | なし | なし | なし |
ユーザー数 | 日本国内で月間アクティブユーザー約9,700万人(日本人口の78%以上) | 世界的に広がりつつあるが、日本では限定的 | 世界で20億人以上の利用者 | 世界で8億人以上の利用者 |
セキュリティ懸念 | データ保存先が一部中国であることや過去のデータ漏洩事件が指摘されている | 高い評価を受けるが誤操作によるリスクもあり得る | メタデータ収集が懸念される | デフォルトではすべての通信が暗号化されない点が弱点 |