ChatGPTと孤独感

by Shogo

OpenAIとMIT Media Labが実施した二つの研究によると、ChatGPTとの会話時間が長くなるほど、ユーザーの孤独感が高まる傾向があることが明らかになったそうだ。OpenAIは4000万以上のChatGPTとの対話データを分析し、MITは981人の参加者を対象に4週間にわたる実験を行っている。

研究の最も重要な発見は、恐ろしいものだ。ChatGPTの利用頻度と孤独感の間に正の相関関係があることが発見された。高頻度の利用者ほど孤独感が強まる傾向があり、社会的交流の減少が見られ、AIへの感情的依存度が高まることが確認された。これは、AI技術の進展とともに、恐ろしい未来が待っていることを意味する。スマホ依存症のレベルではない問題だ。

特に注目すべきは、すでにチャットボットを信頼し、人間関係でも感情的に依存しやすい傾向のある参加者は、研究期間中により強い孤独感とChatGPTへの感情的依存を示したことだ。これは、これから新種の神経症を生み出すということになるかもしれない。

また、テキストと音声、二つの対話モードでは、ユーザーへの影響に違いが見られた。音声モードは短時間の使用では孤独感を軽減する効果があったが、長時間の使用では、特に中立的な声調の場合、悪影響が増大することが分かったそうだ。また、テキストモードのユーザーは、メッセージ全体で平均すると、音声ユーザーよりも感情的には影響は軽微のようだ。これは、やはり音声は感情に大きな影響を与えるということなのだろう。

MITの研究では、AIチャットボットとの対話方法が、ユーザーの感情体験に異なる影響を与えることが示された 。テキストベースのチャットボットの利用は、音声ベースの利用と比較して、孤独感の軽減と関連性が見られた 。この違いの背景には、テキストチャットはより実用的で効率的なコミュニケーション手段と捉えられやすいのに対し、音声チャットはより人間的な対話を期待させる可能性があると考えられるからだ 。期待が高まる分、AIの応答が期待に応えられない場合に、より強い孤独感を覚えるのかもしれない。   

さらに、研究では、チャットボットの声のトーンが利用者の感情に与える影響も調査されている 。その結果、ニュートラルな声よりも感情的な声の方が、利用者の孤独感を増加させる傾向にあることが分かった。これは、感情的な声がより人間らしいインタラクションを連想させ、それによって利用者の期待感が高まるためと考えらる 。特に、自分の性別とは異なる性別の音声モードと対話した参加者は、実験終了時に孤独感とチャットボットへの感情的依存のレベルが有意に高いと報告した 。高度な音声モードの感情豊かな音声は、サポートの提供においては利点がある一方で、ユーザーの境界線を乗り越えてしまう可能性も示唆されている 。 まるで、マクルーハンのホットとクールなメディアの話のようだ。

さらに、会話の内容も重要な要素であることが判明した。個人的なトピックについての会話は短期的に孤独感を高める傾向がったが、個人的なトピックの程度が低い内容では感情的依存や問題のある使用を減少させることが分かった。

もう一つのOpenAIの研究で特筆すべき発見は、ChatGPTとの感情的な会話が実際にはそれほど一般的ではないということだ。それは、そうだろう。一般的には、誰もChatGPTを友達と思って会話していない。感情を多く含む対話は、「Advanced Voice Mode」を頻繁に利用する一部のユーザーグループにのみ高い割合で見られた。このグループは「ChatGPTを友達と考えている」という意見に同意する傾向が強かったそうだ。

これらの研究には、いくつかの重要な限界がある。短期間の調査(MITは1ヶ月、OpenAIは28日間)であること、MITの研究には比較対象となる対照群がないこと、そして因果関係ではなく相関関係の特定にとどまることなどが挙げられる。もともと孤独感を感じている人がチャットボットの利用が多いということが考えられる。「Advanced Voice Mode」を頻繁に利用する一部のユーザーグループは、そもそも、そのような人だったということなのかもしれない。因果関係を証明するためには、対照群のある研究を行うべきだろう。

しかし、これらの研究は、AIとの対話が人間の心理に影響を与えるという直感的な感覚を補強するものであることは間違いない。

今回の研究では、ユーザーの個人的特性も結果に影響することが示されている。人間関係で愛着を形成しやすい人は、AIチャットボットに対しても同様の傾向があることが分かった。また、AIを「友達」として認識するユーザーは、より強い感情的依存を示す傾向があり、長時間の日常的な使用は、ネガティブな影響が出ることも予想される。

今回の研究で言えることは限られているが、強度の依存症が発生する可能性があることだ。それは、個人の心理的な傾向によって大きく違うということは容易に予想されるが、そのあたりのメカニズムを、もっと詳しく研究した方が良いだろう。特にMIT Media Labには、さらなる調査を望みたいものだ。

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