TikTokは、広告主向けイベント「TikTok World」において、AI技術を中核とした広告最適化ツール群を発表した。これらの新機能は、広告主がより精密なターゲティングとパフォーマンス向上を実現するために設計されているそうだ。発表内容からツールの中身を見てみる。
TikTokの広告最適化ツールとは?
■ Insight Spotlight:ターゲット分析をAIで強化
「Insight Spotlight」は、広告主が狙いたいユーザー層(年齢、性別、興味など)ごとに、どんな動画やキーワードが人気なのかをAIが分析してくれるツールだ。例えば、「20代女性向けに肌の健康をテーマにした動画が効果的」といった具体的なアドバイスもAIが提案してくれる。これにより、広告主はユーザーの実際の行動やトレンドに合わせて、より効果的な広告を作れるようになる。
■ TikTok Market Scope:リアルタイムで広告効果を見える化
「TikTok Market Scope」は、広告を見たユーザーが「認知→検討→購入」と進む流れ(マーケティング・ファネル)をリアルタイムで分析できるツールだ。今どの段階に何人のユーザーがいるのか、どの広告や投稿が効果的だったのかが一目で分かる。これにより、広告主は戦略をすぐに調整でき、無駄な広告費を減らせる。
■ Content Suite:インフルエンサー活用を効率化
「Content Suite」は、ブランドに言及したインフルエンサーやユーザーの動画をまとめて管理し、広告として使いたい動画をワンクリックで申請できる機能だ。従来は個別に許可を取る必要があったが、この機能で手間が大幅に減り、話題性のある動画をすぐに広告に活用できる。
■ Symphony Creative Studio:AIで簡単に動画広告を作成
「Symphony Creative Studio」は、AIが自動で動画広告を作ってくれるツール。既存の画像や商品情報をアップロードするだけで、数分で複数の広告動画が完成。さらに、AIが自動で他言語に翻訳したり、アバターを使って多言語でメッセージを伝えたりもできる。これにより、専門知識がなくても高品質な動画広告を作れるようになる。広告の自動生成は、Metaも発表しているが、これが、生成AIの進化でこれからは一般的になるだろう。
■ Smart+:広告運用の自動化
「Smart+」は、広告の配信先や予算配分などをAIが自動で最適化してくれるシステム。複雑な設定や日々の調整が不要になり、広告運用の手間が大幅に減る。最大30本まで動画を入稿でき、AIが最適な組み合わせで配信してくれる。
■ Creator Search Insights:検索データの活用
「Creator Search Insights」は、TikTok内でどんなキーワードやテーマがよく検索されているかを分析できる機能。これにより、広告主やクリエイターは「今、何が求められているか」を把握し、それに合わせたコンテンツや広告を作ることができる。
日本市場でのTikTok広告
日本でもTikTokは若者を中心に人気が高く、今や全年代に広がっている。新しいAIツールの導入で、GoogleやMeta(Facebook、Instagram)といった他の広告プラットフォームとの差別化が進み、特にZ世代へのリーチやエンゲージメント向上に有効になるだろう。
また、2025年6月には「TikTok Shop」が日本に本格上陸し、動画やライブ配信から直接商品を購入できる仕組みも拡大。これにより、広告とECが一体化し、よりダイレクトな購買体験が可能になっている。
アメリカでのTikTok禁止問題
アメリカでは、TikTokの親会社バイトダンスが中国企業であることから「ユーザーデータが中国政府に渡るのでは」との懸念が高まり、2024年に「TikTok禁止法」が成立した。2025年1月19日までにアメリカ事業を売却しなければ、アプリの配信や更新が禁止される見通しだった。しかし、2025年1月の時点でトランプ大統領が施行を一時停止する大統領令を出すなど、最終的な結論はまだ出ていない。
TikTokは、今回の発表で、AIを活用した広告最適化ツールを導入し、広告主が「誰に・どんな内容で・どう届けるか」をより正確に、しかも簡単に実現できるようになる。日本でも今後さらに広告やECの活用が広がると予想される。一方、アメリカでは禁止法案の影響で、TikTokの将来が不透明になっている。
TikTokに限らず、各プラットフォームはAIによる自動化を進めており、広告会社の関与がなくても、広告主が広告業務が行える。広告業界の地殻変化は続きそうだ。