インターネット上でもプライバシー保護が長い間、問題になっている。
個人の閲覧履歴や属性を把握しているのは、ブラウザーに組み込まれている技術のクッキーだ。このクッキーには、そのサイトやサービスだけで使われる第一者クッキーと、広くウエブ全体で、多くの企業やメディアも使える第三者クッキーがある。
この第三者クッキーをプライバシー保護という観点から廃止すると、AppleもGoogleも既に宣言している。Googleは、2022年以降は第三者クッキーをサポートしない。そして、AppleはITF(Intelligent Tracking Prevention)と言う技術を使ってすでに第三者クッキーを制限している。
昨年10月に行われたiOS 14では既に第三者クッキーの使用制限を含むプライバシー保護が機能している。そして、数週間以内に発表されるiOS 14のアップデートでは、かなり強力なものになるようだ。
iPhone上では、消費者行動のトラッキング、ターゲット広告、リターゲット広告の配信、新規顧客の発見、広告効果の測定といったインターネット広告の重要な機能が制限される。
インターネット広告を成長に導いてきた重要な技術が、第三者クッキーによるトラッキングだから、これが使えなくなると、広告主の広告の精度や効率に大きな影響が出る。
それにより、広告により成り立っているビジネスも大きな影響が出る。Googleは2022年まで第三者クッキーをサポートしているが、その後については個々のブラウザをトラッキングしないで、全体として捉える新しい技術を開発中だ。逆に言うと、Googleは広告により成り立っている会社だから、第三者クッキーなどを使った消費者のトラッキングは死活問題だが、Appleは別だ。Appleにとっては、Apple製品のユーザのプライバシー保護というのが最重要課題となっているだろう。
現在インターネットの接続は6割から7割がスマホからとになっている。日本では、AppleのSafariのシェアが7割近くもあるから、iPhoneで消費者のトラッキングができないと言う事は大きな問題となる。日本は、iPhoneのシェアが特に高いが、世界で見ても広告的には大きな問題だ。
このために考えられているのは、使用がされ制限されない第一者クッキーを活用していくことだ。
例えば、TikTokやFacebookは、サービスの利用開始時に、第一者クッキーの利用の許可をまず取り、そのユーザの行動履歴を蓄積していくことになる。その結果、どういう記事やビデオを見たり、どういう商品の広告をクリックしたりするかによってその消費者の趣味や属性を把握していく。当然、メールアドレス等などの基本の個人情報は登録済みだ。これを広告に活用する。同様に広告主も、第一者クッキーにより自ら消費者の情報を蓄積していくことになる。
もちろん全て最初に許可を取ることが必要なので、今でもほとんどのサイトがそうであるように、アプリやウェブの利用をする際には最初にクッキーを受け入れるかどうかの承認のページが現れる。
第三者クッキーにより、ウェブ全体をカバーするようなトラッキングが不可能になると、個々のサービスや広告主は自らデータを集め、広告の販売やマーケティング活動に利用しなければいけない。第三者クッキーの利用の制限が、インターネット広告全体に、どのような影響与えるのかまだわからないが、各社ともプライバシーを保護と広告の効率を高めるような方法を考えだしていくに違いないと思っている。