ソーシャルネットワークBlueskyが登録ユーザー数で「4,000万人」を達成したと発表した。この数字だけを見ると新規参入で伸びていると感じられる。だが、注意すべきは「登録」と「実際の利用」にギャップがある点だ。実際に報じられているところでは、月間/日次でアクティブに利用している人数は数百万規模とも推定されており、登録数の名目だけではプラットフォームの真価を測りきれない。実際に私も研究のために登録しているが、デジタルデトックスをしているので、使ってはいない。
Blueskyは、従来の「誰でも来て、誰でも投稿できる」「アルゴリズムが自動で選別する」という構造から一歩踏み出し、利用者自身がモデレーション(投稿制御・ブロック)をある程度行える構造を持っている。例えば「ミュートワード」「特定グループからの投稿非表示」「引用投稿の分離」など、ユーザーに自分の場をカスタマイズできる道具を提供している。今回の発表ではさらに、投稿に「いいね」とは別に「dislike(良くない)」を付けるベータテスト」、「ソーシャル・ネイバーフッド(社会的近接性)を可視化して、自分のやりとりが多い人々を優先表示する仕組み」など、会話の質を高めるための機能強化が打ち出されているようだ。
これらは一見、技術的な改修のようだが、マーケティング視点で見るとユーザー体験の深化やエンゲージメントの底上げを狙った戦略的な動きだろう。つまり、ただアカウントを増やすではなく、どれだけそのアカウントが、意味ある関係を築いているか」を重視しようとしていることのようだ。
他プラットフォーム― Threads/X/Mastodonの現在地
SNSの世界では、登録数で話題になったプラットフォームが、その後の定着度で差を見せることが多くある。例えばMeta(旧Facebook)系のThreadsはリリース直後に爆発的に登録数を伸ばした。 ただし、利用者がその後も継続して使い続けているか、投稿・反応・滞在時間が維持できているかという点では、登録数=成功ではないことが浮上している。
一方、X(旧Twitter)は月間利用者数で数億に上るとされる中、その収益化能力・広告主の評価・投稿の質という観点では課題を抱えてきた。こうした既存大手のプラットフォーマンスが頭打ち気味になる中、小規模だが特徴を出すプラットフォームの試みが注目されている。
Mastodonのような分散型SNSもそうだ。運営主体が一元化されておらず、複数のサーバーが相互に通信するアーキテクチャを採用しており、ユーザーが自分の居場所を選びやすい構造となっている。しかし、その自由度と引き換えに、広告モデルの確立やユーザー規模・UX整備では中心プラットフォームに劣る。最近ではMastodonでも「スターターパック」「ホスティング簡便化」など、UX改善の動きが出ているそうだ。
| サービス | 直近の利用者数 | 直近1年の傾向 | コメント |
| X(旧Twitter) | 約4億人 | 減少傾向 | 混乱・政治色強化・コンテンツ品質低下の指摘 |
| Threads | 約1億5千万人 | 横ばい~微増 | リリース直後急伸以降は成長緩やか、エンゲージメント課題 |
| Mastodon | 約1,300万人 | 微増 | 分散型SNSとしてコミュニティ色強い |
| Bluesky | 4,000万人 | 急増 | オープン化と招待制撤廃で急成長 |
OpenAIのソーシャルメディアサービスの可能性
OpenAIは現時点でSNSサービスは展開していないが、AIを活用したコミュニティ型・Q&A型のユーザー間交流サービスや、クリエイティブ・プロジェクトの協業型SNSを開発・リリースする可能性が注目されている。AIが会話生成、モデレーション、コンテンツ推薦など多くの領域で実用化されてきており、OpenAIがパーソナライズされた学び・交流・創作空間を提供すれば、新たなSNS潮流を生み出し得るだろう。
今後のSNS普及・展望
SNSの普及は今後、「分散型運営」「自己コントロール」「AIによる安全・快適化」「コミュニティ単位の発展」「パーソナライズと情報把握の精度向上」といった方向にシフトしていくと考えられる。
- XやInstagram型の巨大サービスに頼るだけでなく、BlueskyやMastodonのような自分で環境を作る、カスタマイズする体験を支持する人が増加。
- AI技術によるモデレーションとコンテンツ最適化、OpenAI型コミュニティサービスなど新たな選択肢の登場。
- 「自分の居場所」「信頼できるコミュニティ」「意図に沿った情報収集」といった社会的近接性の設計が重要に。
今後数年で、分散型・AI型・自己コントロール型のSNSが主流になり、個人の嗜好や社会的つながりを軸とした新しい普及の形が現れると推測できる。いずれにせよ一部課金モデルも導入されるのであろうが、基本的には広告モデルなので広告主に売れるような良質なユーザをどこが獲得するかと見ることになるのだろう。
