GoogleがAI検索に広告

by Shogo

Googleが、その主要収益源である検索広告を、新たに導入したAI機能「AI Overview」や「AI Mode」に統合する計画を公式に認めた。これは、年間500億ドルを超える検索広告収入を持つ巨大企業にとって、検索行動の変化に対応し、AIへの巨額な投資をマネタイズするための不可欠な戦略といえる。

Google(Alphabet)にとって、広告収入は約80%に上り、その広告収入の約60%だから、Googleの収入の約半分は検索広告ということになる。検索行動がAI検索に移りつつことを考えると、Googleとしては巨大な広告収入を守るために対応せざるを得ないだろう。

現在、Googleが展開している主要なAI機能は以下の2つだ。

  • AI Overview(AI概要) 検索結果の最上部に表示され、複数の情報源から要約された回答を提示する。
  • AI Mode  ChatGPTに似た対話型のパーソナライズされた検索体験を提供する。

Googleは、このAI ModeにGmailやDriveといったサービスを統合し、ユーザーのあらゆる属性情報を知り尽くした、高度に個別化されたインターネット体験の提供を目指している。これは、広告配信にも非常に有効なデータになる。

Googleよれば、広告は消えるのではなく、この新しいAI環境化で進化するという。具体的な広告のあり方として、以下のような例が挙げられている。

  • 画像検索からの連動  靴の写真をアップロードし「これに似た靴は?」と尋ねれば、その場で関連性の高い商品広告が表示される。
  • 複雑な対話からの提案  食品アレルギーや人数、雰囲気といった詳細な条件をAIに伝えてレストランを尋ねれば、条件に合った店舗予約サービスやディール情報が広告として提示される。

これは従来のキーワードに紐づいた広告から、ユーザーの意図や文脈全体をAIが深く理解し、解決策の一部として広告を組み込むという、新しい広告フォーマットへの移行を意味する。現在、Googleは限定的ながらAI検索内での広告テストを開始しており、特に購買意図の高い購入を意図したと思われる検索キーワードに対して、AI Overview内でのショッピング広告の表示などが確認されているそうだ。

今後のマーケティング・広告

Googleのこの動きは、マーケティングと広告の未来に決定的な影響を与えるが、同時にいくつかの深刻な問題も内包している。

1. 検索結果の信頼性の問題

AI Overviewは、ユーザーが元の情報源であるメディアやコンテンツサイトのサイトをクリックする機会を減少させ、結果的に情報へのエンゲージメントやファクトチェックの意識を低下させているという批判がある。このAIによる回答内に広告が組み込まれることで、今の検索広告にある、オーガニックな検索結果と有料広告の境界線が曖昧になる可能性が高い。

AIが提示する最適な解決策が、実は最も多額の広告費を投じた企業の商品であった場合、ユーザーは真の価値よりも広告主の意図に誘導されやすくなる。

2. SEOの再定義

AIが直接、検索結果のトップで回答を提供してしまう「ゼロクリック検索」が増加することで、ウェブサイトへのオーガニックトラフィックは大幅に減少することが予測される。一部の調査では、AI Overviewの表示によりアクセス数が30%以上減少したという指摘もある。

広告主は、これまでのようにウェブサイトへの誘導を目的とした従来のSEO戦略を見直す必要がある。今後はAIに引用されやすいコンテンツ、つまり専門的で信頼性が高く、ニッチな情報や検証を伴う高品質なコンテンツの作成が重要になる。企業は、AIとの共存を前提とし、人間のレビューや体験談など人間的な要素が意思決定に影響を与える領域に、より力を注ぐべきだろう。

3. データプライバシー

GmailやDriveとの統合は、Googleがユーザーの個人的な生活や習慣に関する膨大なファーストパーティデータを活用できることを意味する。これにより、広告のターゲティングはかつてないレベルで精度を高めることになる。

マーケティングの観点からは、これは究極のパーソナライゼーションであり、楽観的に考えれば、ユーザーにとっては、もしかしたら邪魔にならない、むしろ役立つ広告を提供できるチャンスとなるかもしれない。しかし、その裏側で、企業はより高度なデータ倫理と透明性の確保が求められる。ユーザー側も、AIが自分のすべてを知っているという状況に対し、プライバシー意識が高まり、AIに何を質問するかという検索行動そのものに変化が生じる可能性があるだろう。

AI検索広告市場は、数年内に数十倍の規模に成長すると予測されており、PerplexityやOpenAIへの対抗上でGoogleは、自らの生命線の検索広告を守る必要があるのだろう。

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