DAZNが値上げを発表した。2月22日から月額料金を現行の1925円から3000円になる。
値上げ幅は、現行料金を1.6倍にもする大きなものだ。値上げ金額も1075円と1000円を超える。いよいよ回収の時期に入ったのかと一瞬思ったが、理由は3つあるだろう。
1つは、スポーツコンテンツの調達コストが高騰している事と加入者の好きなスポーツのオフシーズン解約対策それから円安によるDAZNのボトムラインの影響ではないだろうか。
今や映像配信サービスは、乱立気味と言えるほどになり、その目玉コンテンツとしてスポーツコンテンツ獲得は困難になっている。その中でも、Jリーグと並んでDAZN日本の目玉と言えるプレミアリーグは、DAZNの独占契約期間は今シーズンまでである。世界各地で次々と入札による契約が決まっている。日本においても、多分今その交渉が行われているのだろう。
今回のプレミアリーグ側の交渉では、週一試合のパッケージが2つ用意されていて、金額を釣り上げようとしているとSports Businessのサイトで報じられている。もし分割になった場合には、プレミアリーグが見られるのはDAZNだけと言うサッカーファンに対する「売り」が消滅する可能性はある。
このために分割されるパッケージを全て購入して、独占にもっていくためには資金が必要になる。さすがのDAZNももうこれ以上の先行投資ができなくなり、視聴料金の値上げで対応しようとしているのではないだろうか。
もう一つの理由の解約・契約繰り返し対策については、多分以前より悩みがあるのだろう。サッカーファンではJリーグが春秋に見られて、プレミアリーグなどのヨーロッパのサッカーは秋春に見られるため年間を通じてサッカーが楽しめる。しかしプロ野球はオフシーズンがある。その他スポーツでも、毎月目玉があるわけでもない。Jリーグしか見ないという人もいるだろう。このために加入と解約を繰り返す契約者もいると聞く。
新料金が、この加入と解約を繰り返すことへの対策ではないかと思ったのは、今回導入される新料金があるからだ。新しい料金プランは、年間プランの月々払いだ。月3000円の月間プランと違って、好きなときに解約ができないが、年間プランの月々払いを選ぶと、月額2600円となる。(年額31200円)この新料金であれば、現行の月間プランの1.4倍、675円アップの値上げで済む。
最後の円安対策は、日本市場がDAZNにとって重要で、そこから上がる利益が会社を支えている。これが円安で目減りすることの対策だろう。
DAZNは現在200カ国で展開している。国ごとに獲得しているコンテンツが違っているため料金は一律には比べられない。しかし、参考のために見てみると、アメリカでは月額20ドル円つまり2300円程度。しかしこれが年間契約をすると99.99ドルになり、月に直すと8.33ドルとなり、月額1000円と少しだ。年間プランが圧倒的に安くなっている。日本の今回の新料金では、年間プランは27,000円もするので、アメリカと比べると倍以上も違う。
先に書いたように、コンテンツの内容が違うので比べることにはあまり意味がない。だが、明らかに、アメリカでは年間プランに誘導しているが、日本では、年間プランの月分割払いが導入される意図は、年間払いにして売り上げを落としたくないし、と言って、今回必要な大幅な値上げを受け入れられやすくするために年契約の月分割払いの導入になったのではないだろうか。
映像配信サービスは、この数年で激しい競争状態にあり、DAZNが今の事業体になった頃とは様変わりしている。このためにコンテンツの調達コストが上がり、財務的に苦しんでいるのではないだろうか。
日本においてはJリーグの獲得により事業の立ち上げに大きく成功している。このためにDAZNの収益の40%が日本から上げていることが、2019年の財務報告として発表されている。日本はDAZNのエンジンである。これを守るための今回の値上げか。
DAZNの前身であるPerformは安定した収入の見込めるB2Bビジネス行うPerform Content部門があった。しかし、この部門をアメリカのStatsに売却してしまった。現在のDAZNとして改名した会社は、B2C専業になっている。多分その時点で、現在のDAZNを立ち上げるための資金調達が必要だったのだと思われるが、その判断は正しかったのだろうか。
今回の大幅な値上げがどのような結果をもたらすのか、それと現在入札が行われていると思われるプレミアリーグの権利獲得がどうなるのか注目される。