Adobeの事業展開

by Shogo

Adobeは、1980年代からAppleのレーザープリンターで美しい文章を印刷するソフトウェアのメーカーとして有名だった。その後Photoshopを発売して、私にとっては画像処理の会社になった。もう長い間契約をしていてPhotoshopなどを使い続けている。一部ではAdobe税と言う言葉もある。その意味は、高価にもかかわらず、画像や映像編集の専門家だけではなく、一般の写真好きの私のような人も含めてたいていの人でも、使わなければいけない必須のソフトウェアとなっているからだ。

そして最近では、ソフトウェアを買い取りからサブスクリプションに転換して、ソフトウェアのビジネスに大きな変化をもたらした。つい最近のことかと思っていたら、完全にサブスクリプションになったのは、2013年なので、ずいぶん昔のことだ。

そのAdobeは、企業の画像映像の編集の業務から、マーケティング全体までこのビジネスを拡大し、ビジネスの根幹とも言うべき顧客データベースの運用に関わる会社となっている。プリンターの美しいフォントと編集するためのソフトウェアの会社から大きな進化を遂げているようだ。

Adobe Experience Cloud とAdobe Experience Platformの2つのプラットフォームを使って。顧客のその時点の状態を知り、顧客が、何を求めているかを理解した上で、顧客と最適なコミュニケーションすることを可能にするプラットフォームを擁している。

既に多くの企業がAdobeのプラットフォームを使ってビジネスを行っている。特に小売とECをシームレスにつないで、オムニチャネルを実現するためには有効な方法だと言う。

その1つの例はDIY商品などを取り扱うHome Depoで、小売店舗やECなどの様々な接点での顧客のデータを収集し、分析することにより、顧客に対して最適なコミニケーションを行うためにAdobeのプラットフォームを活用しているそうだ。

Home Depoについての記事によれば、Home Depoが重要と考えているのはパーソナライデイションだと言う。Home Depoと顧客のオンラインとオフライン両方での接点の情報を蓄積して、さらに購入履歴などから、顧客が進めているプロジェクトや作業について把握した上で、最適な商品やツールを推奨することができる。何かを購入した際に、関係ないものについてお勧めが、メールなどでコンタクトされると、不快である。逆に、関連の深い商品やツールであれば、感謝するのかもしれない。

Home Depoの記事でHome DepoがAdobeのプラットフォームを使って、顧客情報の蓄積・分析を行なっていることに、大きな感動を覚えた。

それは、プリンターのソフトウェアから始まった会社が、画像処理のソフトウェアの開発に進み、そこから企業の広告や印刷物等の制作を統合するツールを持った会社までなった。これだけでも凄い話だが、驚くべきは、企業の顧客データを全て管理するプラットフォームを提供し、そこで発見したことを使って、最終的なアウトプットを作るためのツールを全て提供するビジネスを行なっていることだ。まさに、企業のマーケティングの上流から下流までのすべての過程をカバーするようになっている。

企業は、自分のビジネスを固定観念で判断してしまいがちだ。有名な例はセオドア・レヴィットの「マーケティング近視眼」の中の例だ。彼によれば、鉄道会社は、人や物の輸送を自らのビジネスと考えずに、鉄道を動かすことがビジネスと考えたために衰退を招いたという。広告会社で言えば、自らのビジネスを顧客のマーケティング上の成功を助けることではなく、マス広告を売ることをビジネスと捉えたために同じように衰退をしている。

一方、Adobeは、自らのビジネスを顧客の企業が、その顧客に対してより良いコミュニケーションを行えるビジネスと捉えることにより、最も川下の制作のフェーズから始めて、データ収集をして最適なマーケティング施策を決定するためのデータベースの構築までビジネスを拡大している。レヴィットの言うマーケティング近視眼に陥らなかった企業の成功例だ。

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