Netflixの決算発表

by Shogo

アメリカでは新型コロナウィルスによるパンデミックは終わったかのようだ。毎日十数万人の新規の患者が出ているし、死者も300人から400人で推移している。しかし、スポーツの映像などを見ても、マスクをしている人などもういない。

パンデミックの時代の終わりとともに、ステイホームで大きな浮力を得たいくつかの企業には逆風が吹いている。フィットネス界のAppleと言われたPelotonは、製造を縮小して人員の30%を削減した。同様にNetflixも契約者の減少と言う問題に直面している。今週の第二四半期の決算で97万人の契約者の減少を発表している。ただしこれは多くのアナリストが予想していた200万人の半分程度であり、株価は少し持ち直した。この予想された大幅な契約者の減少食い止めたのは、新シーズンが公開が始まったStranger Thingsだと言うことだ。

Netflixは過去10年にわたって加入者を増やし続け、特にパンデミックが始まって、急速に契約者を増やし黒字に転換している。しかしパンデミックの中の収束とともに契約者の減少が始まり、2022年の第一四半期で初めて契約者の減少を発表した。その結果、株価の下落が続き、現時点では昨年末から比べると68%下落している。

ただし、アジア太平洋地域では利用者の増加は続いている。落ち込んでいるのは、その他の地域だ。最大市場の北米では130万人の減少、2番目に大きいヨーロッパ・中東・アフリカでは77万人の減少だ。

ステイホームの時代の終わりとともにやってきたインフレの時代に高価な定額配信サービスの契約は最初に切られるのかもしれない。それでもNetflixの全世界の契約者数はまだ2億人を超えており、2億2070万人で業界トップ。1株当たりの利益も3.2ドルの優良会社だ。

定額配信サービスが新しいメディアの王様として持ち上げられていた時代は終わっただけで、そのビジネスモデルは終わっていない。Netflixの発表によれば、アメリカのテレビ市場全体に占めるシェアは6月で7.7%と過去最高になっている。これは人気シリーズのStranger Thingsの新作が公開された結果も影響しているが、多くの人が離脱しているわけではない。今までのウォールストリートの期待が過大だっただけかもしれない。Netflixは、年末までに広告付きの廉価版プランを開始して、金額のために契約を打ち切った人を呼び戻そうと言う計画をしている。しかし問題はそこではなくて、Stranger Thingsのように人々がどうしても見たいと思うような作品の公開を続けられるかどうかにかかっている。

Netflixはデジタルトランスフォーメーションの優良企業と言われており、インターネットのブロードバンド化を見越して、DVDのレンタル事業からストリーミングサービスに業態を変化させた。その後、利用者の好みを分析して、監督、脚本、出演者等のデータから、ヒットする作品の要素を導き出して、作品の自社制作を始めた。多分、ここのデータで導き出せる結果が必ずしも正解ではないと言うことが、コンテンツの難しさだ。それがわかれば誰も苦労しないのだが、とりあえずデジタルトランスフォーメーションの本にはそのように書かれている。

結果として、自社制作したコンテンツが当たったことと、Netflixだけではなくて、Disney、Apple、、HBOなどの多くの配信サービスが競争した結果、定額配信サービスの契約をしていると言うライフスタイルが注目され、それがパンデミックのステイホームで急速に流行になっただけと言えるかもしれない。

Netflixの次のチャレンジは、年末に広告付きプランが始まった段階で、現在の契約者がそちらに大量に移行してしまわないかと言うことだ。つまり自社製品とのカニバリだ。それが起こってしまうとボトムラインに大きな影響が起きるのだろう。

Netflixのこの状況を見ていると、定額配信サービスだけでビジネスを成り立たせている企業の今後はあまり明るくない。AppleやAmazonのように、本業があってそれとの相乗効果を狙っての企業であればもう少し投資を続けられるだろうが、そうでなければ、定額映像配信サービスの業界全体は決して明るいものではない。

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