Microsoftの株価はAppleを抜き、過去1年間で時価総額が1兆ドル以上急騰して、時価総額1位となった。Bloombergによると、Microsoftの時価総額は2兆8900億ドルで、先週の金曜日を終え、Appleの2兆8700億ドルを上回った。
Appleは、2011年に初めてExxson Mobileを抜き、世界で最も価値のある上場企業となり、ほとんどの期間でその地位を維持してきた。それが、Microsoftに1位の座を明け渡した。
Microsoftの時価総額1位は、人工知能の登場によってもたらされたと言えよう。人工知能が、これからの経済・社会・文化に大きな恩恵をもたらすと考えられるために、市場が大きく動いた結果だ。
Microsoftは、2019年に、イーロン・マスクの出資が打ち切られ経済的な苦境にあったOpenAIに投資した。この出資を受けて、OpenAIは、AIを搭載したチャットボット「ChatGPT」の開発を継続することができた。
この出資に、どのような意図が2019年にあったのかは定かではないが、「ChatGPT」が一般公開された2022年には、「ChatGPT」のエンジンであるGPT-4をMicrosoftの自社製品・サービスに組み込むことを決めたようだ。
最初は、Bing検索エンジンにGPT-4を追加することから始まった。その後、Copilotとして、主要製品のOffice 365も人工知能の機能を活用することを決めた。さらに、クラウドサービスのAzureの顧客に人工知能を提供するようになった。このような、Microsoftの人工知能への取り組みが市場から評価された結果が時価総額1位につながっている。
そして、2023年3月、MicrosoftはOfficeアプリケーションにOpenAIのGTP-4を組み込んだ「Microsoft 365 Copilot」を発表した。このサービスは、すでにフォーチュン100の40%以上の企業がMicrosoft 365 Copilotの利用を開始しているようだ。
Microsoft 365 Copilotは、なぜかMicrosoft Copilot for Microsoft 365という不思議な名前に改名されている。多分商標的に「Microsoft Copilot 」を利用して認知を高めたいのだろう。Microsoft 365 Copilotでは、Copilotが単独で独立した名称に見える。「Microsoft Copilot 」とすることでCopilotを商標化したいのだろう。
この「Microsoft Copilot 」の個人向けの「Copilot Pro」は、アメリカでは1月に発表された。そして、今週になって日本での価格も月額3200円と発表された。「Copilot Pro」は、Office365にバンドルされず、追加で料金をし腹合う必要がある。「Copilot Pro」を利用すれば、Word、Excel、PowerPoint、OneNote、OutlookでGTP-4を優先的に利用できる。このように、Microsoft のあらゆる製品・サービスに人工知能が組み込まれたと言って良いだろう。月額3200円は、絶妙な価格だ。ChatGPT Plusに月額20ドルを支払うより、少しだけ高く、Office365でGTP-4があ使えると考えると納得感のある価格となっている。
一方、Appleは、2007年に発売したiPhoneにより、2011年から時価総額1位を維持してきた。iPhoneは、Appleの売上の半分以上を占める大きな商品だが、すでにスマホ市場は飽和しているために、大きな成長が期待できない。そして、2011年にiPhoneに搭載された「バーチャル・アシスタント」のSiriは、その時点では人工知能的な存在として考えられていたが、ChatGPTが登場した今ではおもちゃのようなものになってしまった。
Appleは人工知能で出遅れているように見える。この遅れを取り戻すために、ChatGPTによる人工知能のブームを受けて、Appleも大規模言語モデルをテストしていると言われている。最近もAppleは大規模言語モデルのトレーニングのために出版社とその著作物の利用について話し合いを行っていると報道された。しかし、現時点では、Appleの人工知能分野での計画については何も発表されていない。
このような人工知能への取り組みの違いが株価に現れたものなのだろう。