Amazonが、2025年からNBAおよびWNBAと11年間の放映権契約を結び、Prime Videoで試合の独占配信を開始する。ただし、この権利には日本は含まれていない。日本では楽天が権利を持っていて、NBA Rakutenでしか見られない。今回の契約に含まれる国は、アメリカ以外では、イギリス、アイルランド、スペイン、フランス、イタリア、ドイツ、ブラジル、メキシコだ。これにカナダが1年遅れて加わる。
今回の契約では、The Walt Disney Company、NBCUniversal、Amazon Prime Videoの3社が放送権を得た。Amazon Prime Videoでは、2025-2026シーズンから毎シーズン66試合のNBAレギュラーシーズン中継を独占配信する。その中には、シーズン開幕週のダブルヘッダーや新設されるブラックフライデーのNBA試合、エミレーツNBAカップのノックアウトラウンド全試合が含まれる。確かに、ブラックフライデーと言えばAmazonのセールだから、これを交渉したのだろう。
さらに、NBAプレイオフでは、プレイイントーナメント全試合と1回戦・2回戦の一部試合、そして11年の契約期間中6シーズンのカンファレンスファイナルを独占配信する予定。一方、人気が急上昇中のWNBAでは2026年から毎シーズン30試合のレギュラーシーズン中継と、プレイオフ各ラウンドの一部試合を配信する。ただし、対象試合数としては、The Walt Disney Company、NBCUniversalの2社よりは少ない。
Amazonのスポーツコンテンツは着実に拡大している。すでにNFLやUEFAチャンピオンズリーグ、ウィンブルドン、NASCARなどの人気コンテンツを配信しており、NBAとWNBAはそのラインナップに加わる。
Amazonが高額な放送権料を払ってでも、スポーツコンテンツの独占配信権を手に入れているのは、いくつか理由があるだろう。まず、Amazon Prime Videoの魅力向上を目指していることだ。
スポーツ中継は、Amazon Prime Videoのラインナップを充実させ、サービスの価値を高める重要なコンテンツとなる。NFLやUEFAチャンピオンズリーグ、ウィンブルドンなどの人気スポーツに加え、NBAとWNBAの獲得により、Amazon Prime Videoは、映画・テレビ番組に加えて魅力的なコンテンツのラインアップを持つことになる。これは、競合するNetflixやAppleTV+などに対して高い競争力を持つことになる。
それが、プライム会員の獲得と維持になることも狙いだろう。プライム会員の特典として、Amazon Prime Videoが付いているので、新規のプライム会員獲得と既存会員の維持に貢献する。アメリカでは、日本円で2万円ほども支払うのだから特典も豪華でなければいけないだろう。そして、スポーツファンをAmazon Prime Videoに引き付けることで、AmazonのECを含めたエコシステム全体の利用が促進できる。
次の狙いは広告収入の拡大だろう。すでに、Amazonは、GoogleとMetaに次いで3位の広告メディア企業だ。ライブスポーツ中継は、視聴者を引き付ける強力なコンテンツであり、広告主にとって魅力的だ。スポーツコンテンツの拡充により、Amazonは広告収入の増加を見込んでいるのだろう。
それと、スポーツを世界展開に利用することだ。NBAやWNBAなどの人気スポーツを世界各国で配信することで、AmazonはAmazon Prime Videoのグローバルな成長を加速させようとしている。スポーツは言語の壁を越えて楽しめるコンテンツであり、海外展開に適しているからだ。サッカーが加われば最強になる。
日本はスポーツコンテンツ大国だから、すでに多くのスポーツは既存契約企業が存在する。このために、日本ではAmazonは新規の格闘技などの権利を取得しているが、今後、MLBやNBAなどの権利を取りに来ると、高額の放送権料を厭わないAmazonに日本企業は太刀打ちできなくなるかもしれない。Amazonのスポーツ戦略は、日本を含めて、どこまで行くのだろうか。