気をそらすものコントロール

by Shogo

子供の頃から落ち着かない子と呼ばれた。多動性障害という言葉は、まだなかったが、今ならそう診断されただろう。成績が悪かったのは、怠け癖だけではなく、病気だったからという事にしようと思う。だから、今でも、ウェブを見ても、広告やポップアップ、自動再生動画など、気が散る要素に遭遇して集中力を奪われることが多い。

Appleは、ユーザーエクスペリエンス向上のため、iOS 18、iPadOS 18、macOS Sequoiaに搭載されたSafariブラウザに、「Distraction Control」(気をそらすものコントロール)という機能を導入した。この機能は、ウェブページ上の気が散る要素を選択して非表示にすることで、ウェブページ上のコンテンツに集中できる環境を提供することが意図されている。まるで、私のために出来たような機能だ。

Distraction Controlは、静的な要素に対して最も効果的に機能する。頻繁に更新される広告や動的なコンテンツには、完全には対応できない可能性があるらしい。しかし、一度非表示にした要素は、同じウェブサイトの他のページでも同様に非表示になるため、その広告枠が非表示になるかもしれない。

Distraction Controlを、まだ使ってはいない。それは、iOS 18でウエブを見ることはめったにないし、macOS Sequoiaにはアップデートしていない。なにか不具合があったらパソコンが使えなくなると困るので、当分様子見をしようと思っているからだ。使ってはいないが調べてみると具体的な使用方法は簡単だ。

Macの場合

  • Safariのスマート検索フィールドで「ページメニュー」ボタンをクリックし、「気をそらす項目を非表示」を選択する。
  • ページ上でポインターを移動すると、非表示にできる各項目の周囲に枠線が表示されるので、写真の不要な部分をトリミングする要領だ。
  • 非表示にしたい項目をクリックする。複数の項目を選択することも可能だ。
  • 「完了」をクリックして変更を確定するか、「キャンセル」をクリックする。

iPhoneまたはiPadの場合

  • Safariのスマート検索フィールドで「ページメニュー」ボタンをタップし、「気をそらす項目を非表示」をタップする。
  • 非表示にしたい項目をタップして選択する。選択した項目の周囲に枠線が表示される。
  • 項目内の任意の場所をタップして非表示にする。複数の項目を選択することも可能だ。
  • 「完了」をタップして変更を確定するか、「キャンセル」をタップする。
  • 非表示にした項目を再度表示したい場合は、「ページメニュー」ボタンの横にある目に斜線が入ったアイコンをタップまたはクリックし、「非表示の項目を表示」を選択すればよい。

Distraction Controlが広告やメディアビジネスに与える影響

Distraction Controlは、ユーザーに快適なウェブ体験を提供する一方で、メディアビジネス、特に広告業界に大きな影響を与えるだろう。

従来のディスプレイ広告は、ユーザーの視界に入る場所に表示されることで、その存在をアピールしてきた。しかし、Distraction Controlによって、これらの広告が容易に非表示にできるようになると、広告の表示機会が減少し、広告収入に依存するメディア企業の収益に影響が出ることが懸念される。

広告業界は、従来の広告戦略の見直しが必要だ。

まず、今までのデジタル広告の成長を支えてきた広告効果測定が難しくなる。Distraction Controlによって、広告が実際にユーザーに閲覧されたのか、それとも非表示にされたのかを正確に把握することが難しくなるからだ。

この状況に対応するためには、いくつかの、すでにある広告手法を強化することから始めるべきだろう。まず、ネイティブ広告への注力だ。単純な広告ではなく、コンテンツに自然に溶け込む形で広告を掲載することで、ユーザーの抵抗感を減らし、広告効果を高める必要がある。

そして、コンテンツマーケティングが、さらに重要になる。ユーザーに価値のあるコンテンツを提供することで、ユーザーとのエンゲージメントを高め、長期的な関係を構築することを目指す戦略を重視しなければいけない。

そして、ブランデッドコンテンツの採用だ。 広告主は、メディアに協力を依頼して、ユーザーにとって有益なコンテンツを制作して、そのコンテンツのスポンサーになることで、ブランドイメージ向上と広告効果を両立させることが、効果的なマーケティングコミュニケーションにつながる。

当面、まず広告業界が取り組まなければいけないのは、データ分析だ。例えば、どの様な種類の広告が非表示にされやすいのか、どのようなコンテンツがユーザーの関心を惹きつけるのかなどを分析することで、今後の戦略に活かすことができるだろう。

メディア企業も、この変化に対応するために、広告モデルにとらわれず、新たな戦略を模索する必要に迫られている。

Distraction Controlの普及は、コンテンツの質向上を促す力となるだろう。ユーザーに「気をそらすもの」と認識されにくい、質の高いコンテンツを提供することで、ユーザーの関心を惹きつけ、滞在時間を延ばすことが重要となる。

例えば、読者の知的好奇心を刺激するような深掘りした記事、専門家による解説、独自の視点を持つコラムなど、他のメディアでは得られないような価値を提供することで、ユーザーの支持を獲得できる。だが、言うや易しで簡単ではない。できるなら、今すでにやっているだろうし、当然のことながらコストははるかに高くなる。

今後は否応なく、広告収入への依存度を減らすために、課金モデルの導入考えなければならなくなるだろう。まず、サブスクリプションだ。月額料金を支払うことで、広告なしでコンテンツを閲覧できるサービスに転換する。だが、これも簡単ではないことは明白だ。できるなら今までにやっている。歴史的に有料メディアは難しい。だから、ペイウォールの検討があり得るだろう。 特定の記事やコンテンツへのアクセスを有料にすることで、収益を確保する。それ以外は、広告ビジネスとなるが、ベースの収入は確保できる。

Distraction Controlの登場は、広告やメディアビジネスにおけるパラダイムシフトの始まりと言えるかもしれない。それは、両業界にとって大きな課題であると同時に、新たなチャンスなる可能性もある。それは、インターネットが、登場して30年弱で迎えた広告モデルからの離脱だからだ。新たなビジネスモデルを開発しなければ生き残りはないという意味で、メディアと広告の生まれ変わりをDistraction Controlが迫っている。

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