米連邦地方裁判所が、Googleのオンライン広告技術における独占的行為を違法と認定する判決を下し、Googleの事業形態に大きな変化をもたらす可能性が高まっている。この判決は、昨年8月の検索サービス市場における独占認定に続く厳しい法的判断となり、デジタル広告市場の将来像に重大な影響を与えることが予想される。
2025年4月17日、バージニア州東部地区連邦地方裁判所は、Googleがオンライン広告技術市場において違法に独占を維持していたと認定した。この判決は、Googleが「意図的に独占力を獲得・維持することによって」シャーマン反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)に違反したと結論づけている。
この判決に対し、Googleの規制問題担当副社長は「我々はこの裁判の半分に勝利し、残りの半分については上訴する」と述べ、「メディアには多くの選択肢があり、彼らがGoogleを選ぶのは、当社の広告技術ツールがシンプルで手頃な価格で効果的だからだ」と主張している。
検索サービス市場での独占認定と経緯
今回の広告技術に関する判決の前に、2024年8月5日、ワシントンD.C.の連邦地方裁判所はすでにGoogleの検索サービスが反トラスト法に違反していると認定する判決を下していた。この判決では、Googleが検索市場においておよそ90%のシェアを持ち、その地位を維持するために不公正な手段を用いていたと認められた。
判事による277ページに及ぶ意見書では、「Googleは独占企業であり、独占を維持するために独占企業として行動してきた」と明確に述べられている。判決が特に問題視したのは、GoogleがApple、サムスン電子、モジラなどに毎年何十億ドルも支払い、各プラットフォームの初期設定の検索エンジンとしてGoogleがあらかじめインストールされるようにしていた慣行だ。
具体的には、Googleの親会社であるアルファベットが毎年Appleに対して200億ドルを支払い、グーグルをiPhoneのデフォルトの検索エンジンにするなどの行為が違法と認定された。
Googleビジネスモデルへの影響と分社化の可能性
これらの判決を受けて、Googleは今後大きな事業再編を迫られる可能性がある。米司法省は広告技術事業の一部売却を求めており、具体的にはメディア向け広告サーバーと広告取引所を含むGoogle Ad Managerの売却を要求している。
検索サービスに関する訴訟でも、司法省はGoogleにウェブブラウザの「Chrome」の売却などを含む是正措置を求めており、2025年4月には3週間にわたる是正措置についての審理が予定されている。
Googleの広告技術事業は2023年に310億ドル(約10%)の収益を生み出しており、この事業の一部を手放すことは同社にとって大きな打撃となる。さらに、2008年に31億ドルで買収したDoubleClickを含む広告技術事業の分割は、2023年9月に報じられたように、すでに欧州の規制当局への対応としてGoogleが検討していたことでもある。
日本および世界各国の規制当局の対応
Googleの独占的慣行に対しては、米国だけでなく世界各国の規制当局も厳しい目を向けている。特に日本では、2025年4月15日に公正取引委員会がGoogleに対して排除措置命令を出した。
これは日本でGAFAM(Google、Amazon、Facebook/Meta、Apple、Microsoft)と呼ばれる巨大IT企業に対する初めての命令となる。日本の公取委は、Googleが遅くとも2020年7月以降、アンドロイド端末の製造業者6社に対して、検索サービスやブラウザ「Chrome」をスマホの初期画面に配置するよう求める契約を結び、国内で販売されたアンドロイド端末の約80%がこの契約の対象となっていたと認定した。
また、広告収益の分配契約においても、メーカーや通信事業者5社に対して、収益分配を受けるために自社サービスを初期画面に配置し、他社サービスを搭載しないという条件を課していたことも認定された。
EUでも、2018年にEU競争法違反としてGoogleに43億4000万ユーロ(約7000億円)の制裁金を科しており、2022年のEU一般裁判所もこの決定を支持している。
今後の影響
これらの判決がデジタルマーケティング業界に与える影響は計り知れない。特にオンライン広告市場では、Googleの支配力が弱まることで、競争が活性化し、新たな事業者の参入や革新的なサービスの登場が期待される。
デジタルマーケティング担当者にとっては、多様化する広告プラットフォーム、進化するAI技術、厳格化するプライバシー規制など、急速に変化する環境への対応が求められるだろう。従来Googleに依存していた広告戦略の見直しや、複数のプラットフォームにリスクを分散させる戦略の検討が必要になってきた。
検索市場においても、Googleの独占が崩れることで、Microsoft BingやAI検索など新たな検索エンジンの台頭が予想され、SEO戦略の多様化が求められるようになる。公正取引委員会も、検索の主戦場であるスマホでGoogleが優遇される状況を放置すれば、新たなプレーヤーの参入余地が小さくなるとの懸念を示している。
Googleに対する一連の判決は、単に一企業の事業形態を変えるだけでなく、デジタル広告エコシステム全体の再構築をもたらすだろう。市場の独占状態が解消されれば、広告主にとっては選択肢の拡大や広告費用の適正化が期待できる一方、出版社やコンテンツ制作者にとっては収益機会の多様化が見込まれるのかもしれない。
反トラスト法による巨大テック企業への規制は、短期的には市場の混乱をもたらす可能性もあるだろう。しかしながら、検索について言えば、AI検索が登場しているとは言え、検索と言えばGoogleなので.スマホでデフォルトで設定されていなかったり、Googleとは別会社になったとしてもユーザGoogleの検索を使い続ける事は間違いない。現時点で市場視野90%を超えておりこれが大きく変わる事は予想できない。