広告業界団体幹部がAppleを偽善的と非難

by Shogo

Appleが2021年のiOS 14.5で導入したATT (App Tracking Transparency)以降、AppleとMetaなどの広告ビジネスを行っているプラットフォーム企業との緊張感が高まっている。ATTが広告ビジネスに大きな打撃をあたえているからだ。

MetaやGoogleも参加しているIAB(Interactive Advertising Bureau)の幹部が年次総会を控えて、Appleを改めて非難する声明を行った。IABはオンライン広告の標準規格を定めたり、動向調査を行っている団体である。広告主も含めて多くのメディア企業が参加しているが、基本的にはインターネットの広告の業界団体である。その広告ビジネスを大きく毀損したAppleのプライバーシーポリシーの変更については、度々、反対の立場を明らかにしている。

Appleが2021年に導入したATTでは、iOSのアプリがユーザの個人情報を収集する場合には、事前に本人から許可を得ることを義務づけている。アプリのインストールの際に、ポップアップが現れて、「アプリにトラッキングされないように要求」か「許可」のどちらかを選ぶことになっている。このATTが導入されて以降、ユーザ調査によって数字はばらつきがあるが、7割から8割は追跡されないことを要求していると言う。このためにFacebookやInstagramを傘下に持つMetaは広告のターゲティング、購買などのユーザの行動の把握についてデータが取得できないために大きな影響受けている。結果として、Metaの株価は昨年50%以上も下落した。

IABの幹部は、このAppleのプライバシーポリシーは偽善的であり、広告ビジネスを大きく傷つけていると非難している。それは、Appleは自社のユーザのデータを収集しているからである。

しかし、どちらかと言えば世の中の大勢はAppleのほうに流れている。連邦取引委員会は、インターネット広告を「監視広告」(surveillance advertising)と呼び、広告業界を規制する連邦法を検討している。それ以前にカルフォルニア州は、すでにユーザのデータの収集・保存・共有に制限をかけるCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法:California Consumer Privacy Act)制定して、2020年7月に発効している。また、ヨーロッパにおいてもGDPR(EU一般データ保護規則:General Data Protection Regulation)が個人情報の保護について厳しい規制を行っている。日本においては、2022年に個人情報保護法が改正され、クッキーが個人関連情報に指定されたが、まだ比較的緩やかだ。今後、がさらに改正される可能性もある。

このユーザのインターネット上のトラッキングについては、更に厳しい世論の高まりが予想される。Googleが検討しているような個人情報保護とインターネット広告の有効性を担保する技術についての研究が進むものと思われるが、それが一般のユーザや規制当局は納得できるものになるかどうかは現時点ではまだわからない。

それはさておき、公な団体の幹部が、特定の企業を「偽善的」と決めつけるのはあまり聞いたことがない。

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