Googleが「プライバシー・サンドボックス」の実験結果公表

by Shogo

Googleは、広告のターゲティングやトラッキングの重要な技術である第三者クッキーの廃止を2024年の年末と発表している。日本の総広告費の何倍もの広告の売り上げを上げているGoogleにとって、第三者クッキーは、広告の効率や有効性を支えており、第三者クッキー廃止後のアドテクの精度は売上に直結するために、慎重だ。

第三者クッキーの廃止は、Googleにとって頭の痛い問題だ。しかしながら、多くの人が、インターネット上のプライバシーの問題について懸念を持つようになり、またライバルのAppleが早々に、そのブラウザのSafariから第三者クッキーを廃止し、プライバシー保護ををブランドの中核に据えたコミュニケーションを行っている以上、Googleも第三者クッキーを廃止しないという選択肢はない。

Googleは、第三者クッキー無しでも、その広告ビジネスの守るために、第三者クッキーに変わるターゲティングとトラッキングの方法について研究と開発を重ねている。今週、Googleは、第三者クッキーに代わる新しい広告ツールの、「プライバシー・サンドボックス」のアップデートと、それを使った実験の結果を発表した

Googleの行った実験の結果によれば、最新の「プライバシー・サンドボックス」を使った実験によれば、広告費は、第三者クッキーを使った場合と比べて、最新ツールにより最適な広告ターゲット特定できなかったために2から7%が広告出稿の目標に到達しなかった。そして広告効果も1から3%低下した。この実験では第三者クッキーを使った場合と比べて90%以内で精度が維持されていると言う。

この結果を、第三者クッキーほどの精度を持つものはないから、仕方がないと諦めるのか、広告費が無駄遣いになると判断するのか、意見が分かれるところだ。広告主の立場からすれば、少しでも効率が下がる事は受け入れられないかもしれない。たとえば、広告費が100億円なら、数%の効率の低下は数億円になる。

Googleが、一年一年と第三者クッキーの廃止の期限を延期する一方多くのアドテック企業がクッキーと同等の機能を持つと主張する広告IDを開発している。主な企業はThe Trade Desk、LiveRamp、Neustarなどだ。それぞれ独自のシステムを持っている。また、インターネット広告を販売するサプライサイドの広告プラットフォームは、メディアの持つユーザのデータを利用して、第三者クッキーを使わないターゲティング広告を開発し始めている。

Googleの第三者クッキー以後の広告システム、「プライバシー・サンドボックス」には、いくつかのツールが含まれており、第三者クッキー以後のターゲティングの中核をなすものはTopics APIだ。これはターゲット個人ではなく、特定の興味を持つグループとしてターゲティングに活用するものだ。個人の行動履歴データは外部には出されないので、プライバシーが保護される。

Topics APIと同時に使われるものは、今までFLEDGEと呼ばれていたシステムだ。FLEDGEは、”first locally executed decision over groups experiment “の略だそうだ。これについては、開発が進み、Protected Audience APIと改名された。これは、ユーザの個人データを明らかにすることなく、広告オークションを実行するツールだそうだ。また、今回の実験では、パブリッシャー提供IDと知られるメディア企業の持つデータも同時に使われているという。このデータは、個人の詳しいデータが含まれるので、精度的には高い。ただ、このデータを外部に公開することなく、利用可能なのか、その方法についての説明はなかった。

今回公開された実験の結果が、第三者クッキーに代わるものとして十分な能力を持つと判断するかどうかは、人によって違う。コップに半分水が入っているか、半分が空かと言う見方と同じだ。

これまで何度も第三者クッキーの廃止時期を延期してきたGoogleにとって2024年末の期限を守るのかどうかは現時点ではまだわからない。日本の広告費の何倍もの広告費を稼ぐGoogleにとって、企業としての帰趨を制する判断だけに簡単には決められないのだろう。

You may also like

Leave a Comment

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください