インドの人口とApple Store

by Shogo

今週はインドの話題が2つあった。一つは国連が発表したデータによれば、インドの人口が中国のそれをもうすぐ超えて、世界一になることだ。もう一つは、最初のApple Storeがムンバイとニューデリーにオープンしたことだ。

中国が一人っ子政策のために人口の成長が鈍化して、インドが中国の人口追い越すと言われて久しい。それがついに実現しそうだと言う事は驚くほどのことではない。予想されたことだ。しかし。テクノロジー大国として知られるインドにApple Storeが今までなかった事は、驚きだった。

インドでもiPhoneはかなり売れており、今まで代理店を通して販売されているそうだ。iPhoneは、インドでも高級モデルの市場に限れば最も売れているスマホという。そろそろ直接販売の時期に来ていたということなのだろう。

インドの所得の上位10%は、月額2万5000ルピーが給与のスタートと言う。それが約40,000円とすれば、インドでiPhoneを買うためには、数ヶ月分の給与と言うことになる、日本でもiPhoneの価格が1ヵ月分の給料と同じと言われているが、それ以上と言うことになる。しながら、巨大な人口を抱えるインドの中での数%の人たちは、巨大な市場と言える。

また、インドは大きな経済成長が期待されている。中国はこの数十年に急速な経済成長を遂げた。条件を考えると、同じような経済成長がインドで起こる可能性は高い。

特にチャイナリスクのために生産拠点を求めている多くの企業にとって、インドは中国の代替地としての候補として上位に位置している。AppleがiPhoneの製造拠点として中国を選び、その経済的に発展に貢献したように、インドでも生産を開始する可能性もある。

現時点では、中国はインドよりもはるかに豊かになっている。しかしながら、1990年代初めまでは一人当たりGDPではほぼ同等だった。一人当たりGDPの2022年の数字では、中国の12,813.77ドルに対してインドは2375.21ドルと6分の1程度だ。しかし1990年には、中国の346.87ドルに対して、インドは375.22ドルと同じレベルにあった。この30年の中国の経済成長がいかに大きかったがよくわかる。

長くイギリスの植民地であったインドは近代化が遅れていた。1970年代にはゆるい形での社会主義経済を政策をとっていた事もあり、中国に比べて解放が遅れた事は事実だ。しかし、IT大国として知られるようになった。インドは中国が過去30年に成し遂げたような経済的発展をする可能性はかなり高いと思われる。中国が共産主義下の市場経済と言うある意味複雑な仕組みを持っているのに比べて、インドの政治経済体制は西側のそれに近い。大国として独自路線を歩み、例えばロシア制裁などで西側と一線を画すこともあるが、それでも様々な形の協力関係を多くの国と持つ。経済発展にその関係が活かされると思われる。

また、テクノロジー大国だけではなく、ボリウッドとして知られるような映画制作の大国でもあり、長い歴史を持つインドの文化的な背景は、他の新興国にない深みを持っているようにも思える。これも、今後の成長の要因にになるだろう。単に、物の生産拠点だけではなく、文化も輸出を開始するものと思われる。

広告費を調べてみると、2021年のZenithの調査によれば、インドの広告費は100億3000万ドル。これは世界の第12位。 世界2位の広告市場を持つ中国の10.3%にあたる。また、世界第3位の日本の19.4%だ。この数字もインドの経済成長とともに大きくなり、30年後には広告大国でもあるだろう。

以前、オランダの銀行の日本進出計画に従事して、半年ほど、その会社にほぼ常駐して働いたことがあった。私の担当はマーケティングだが、IT関係はインドの会社が請け負っていた。彼らは英語での会話には日本人よりはるかに慣れているのだが、ただしその発音が非常に聞き取り辛く困ったことがあった。多分相手は日本人の英語についてわかりづらいと不満を言っていただろう。だが、あちらの英語がグローバルスタンダードに近い。今後も、あの英語が世界にますます広がってゆくと思われる。正解の英語人口は、15億人と言われるが、その多くはインド人だろうからだ。

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