Appleの時価総額

by Shogo

Appleは先週金曜日、時価総額3兆ドルを達成した最初の企業となった。Appleが2020年8月に初めて時価総額2兆ドルを達成した時は、アメリカ企業としては初めてであったが、それ以前にサウジアラビアの石油ガス大手のサウジアラムコが2019年12月に2兆ドルを達成していたので、2番目だった。Appleの時価総額は2000年に50億ドルだった。その時点から600倍の成長したことになる。

東京証券取引所の上場企業の時価総額は、現時点で710兆円程度だから、Appleの時価総額の大きさがよくわかる。為替レートにもよるが、一社で約6割だ。

2000年のAppleは、1990年代半ばに業績が悪化し、ほぼ倒産の状況からの回復途中だった。Macintoshが1984年に発売されて、DTP市場やハイエンドの市場で成功したものの、その後PC/AT互換機の廉価版に押されて苦戦していたし、製品戦略の失敗も重なった。業績が悪化していた頃のAppleは、虎の子であるMacintosh OSのライセンスまで多くの企業に開放して。Macintosh OSの様々なデザインの互換機まで発売され、AppleやMacintoshのブランドも大混乱の状況になっていた。

ブランドイメージや業績の悪化だけではなく、1990年代半ばには、次期OSの開発が進まず、最終的には、Appleを去った後のスティーブ・ジョブスが立ち上げたNeXTを1997年に買収して、NeXTのOSのNeXTSTEPを次期OSとして採用した。NeXTSTEPは改良が続けられ、大きく変わったにせよ、今でもMac OSとして生きている。

AppleによるNeXTの買収によりAppleに復帰したスティーブ・ジョブスは、1998年に、それまでのコンピューターのイメージを一変させるカラフルで、半透明のボディのiMacを発売し、業績を回復させることになる。

話が長くなったが、つまり50億ドルの時価総額であった2000年は、iMacが発売されていたものの、まだ2001年のiPod発売前であり、倒産後からの回復の時期であった。それでも50億ドルの評価があったのは、1998年のiMacが成功していたからなのだろう。

最初にMacintoshを買ったのは、ニューヨークに赴任した1990年にMacintosh IIcを買い、その後Powerbookが発売されて、何代目かを買った。そのPowerbookはBlack Birdと言う愛称で、曲線を生かしたデザインが斬新だった。何台もMacintoshを買ってきたが、現在使用中のもの以外は全て手元にない。だが、このBlack Birdだけはまだ手元にある。現時点はわからないが、少なくとも1年位前にはまだ電源も入った。

Appleは、1976年にスティーブ・ジョブスとスティーブ・ウォズニアック、ロナルド・ウェインによって設立されている。大型コンピュータしかなかった時代に、個人向けの世界初のキーボードとディスプレイ大型のAppleIを開発している。その後AppleIIが成功して個人向けコンピューターのトップ企業となっている。

その後成功と失敗が続くが、1984年のMacintoshの発売と成功がAppleの基礎を築いたと言って良いだろう。しかし、経営方針やマーケティング戦略が一定せず試行錯誤を繰り返して、スティーブ・ジョブスの追放や様々な出来事を経て、1990年代半ばの倒産の危機に至る。

スティーブ・ジョブス復帰後のiMacの成功は、Appleを再びパーソナルコンピューターの重要な企業として復帰させたが、しかし大きな飛躍のきっかけは、やはり2001年のiPodの発売であろう。ここからAppleはパーソナルコンピューターの会社だけではなく、音楽を含めたライフスタイルを取り扱う企業として発展を遂げてきた。そして2007年、日本では2008年のiPhoneの発売を迎える。iPhoneは専門家の間では成功しないと見られていたが、キーボードがなくタッチパネルで扱う大型ディスプレイのiPhoneは多くの人に受け入れられ、結果的に、人々の生活や社会のあり方まで変えた。

この成功を、授業ではiPhoneを電話と位置づけたことにあると説明している。すでにBlackberryなどのスマホは存在している中で、電話として小型コンピューターを売った点がマーケティング戦略だ。これは、ヘンリー・フォードが、自動車を馬無し馬車として売ったことに似ている。人は新しいものを受け入れるのが苦手で、新しいものを買うイノベーターは限られているからだ。

今やすでにiPhoneはハードウェアではなく、人間が行う様々な活動のインフラとなっている。このiPhoneをベースに、AppleはiPhone経済圏と呼ばれるビジネスを立ち上げ、ソフトウェアの販売からコンテンツ販売までビジネス領域を拡大することに成功している。Googleが発売したAndroidスマホとの競争はあるにせよ、iPhoneの人気は強固なものがあり、高価格にもかかわらず大きなシェア維持してきた。

一般的にはAppleの製品はデザインが良いと言われることが多い。だが、Samsungも含めて、他社の製品のデザインと何ら変わることがない。強いのは、そのユーザインターフェースで、一度使い勝手に慣れてしまうと、他社の製品は複雑すぎて使えない。しかし、これは別にAppleの製品だけに起こることではなく、一度ある会社の製品に慣れてしまうと、他社の製品に慣れるための学習コストが大きくて、ブランドスイッチが難しくなる。それを割り引いても使いやすさではAppleに分があると思う。

製品以外では、やはりAppleの広告や店舗展開も含めたブランド管理の部分の貢献が大きい。当初自ら店舗を持ち直販を行うのは、あまりにもコストが大きすぎて、馬鹿げたアイディアだと思った。しかし、今となっては、Apple Storeは、Apple やiPhoneのブランドの世界観を作る重要な要素になっていることに気づかされる。

歴史的に見ても、Appleの製品は成功したものもあれば、失敗したものもたくさんある。しかし、スマホが、これほど生活のインフラになった現在を考えれば、iPhoneがその中で一定のシェアを維持しAppleの時価総額は大きく毀損することはないだろう。仮に、今回のVRヘッドセットのような新製品で失敗するにしても、時価総額に影響を与えるほどでもない。だが、さらに時価総額が今後上がるかどうかは市場次第だからよくわからない。

今朝は雨で散歩はお休み。

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