Facebook、 Instagram、 WhatsAppの親会社のメタ・プラットホームズが、Twitterと競合になるアプリのThreadsを発表した。この新しいアプリは、Twitterと同じ機能を持ち投稿者の会話を多くの人が閲覧できる。Instagramと連動し既にInstagramでフォローしている人をフォローできる機能があるようだ。つまり、Instagramのユーザベースを活用してそのユーザにTwitterのような機能として利用させようとしているようだ。
今回のメタの動きは、Twitterが混乱に陥ってユーザの間でも不満が高まっているところを狙ったと考えられる。イーロン・マスクにもよるTwitterの買収以来、様々な運営方針の変更が加えられた。アルゴリズムの変更により特定のツイートが注目されるようになったり、問題のある発言を削除するルールを変更して発言に制限を加えないので、何でもツイートできるようになったりして、多くの人が自らのタイムラインに現れるツイートに疑問を持つようになっている。さらに有料のTwitter Blue誘導策が取られて、いままでのユーザを置き去りにしているようだ。広告モデルから有料課金モデルにビジネスモデルを変更してしようとしているように見える。
このため、多くのTwitterユーザに不満が高まっているところに、先週末にユーザが1日に読めるツイートの数に制限を課した。これで多くのTwitterユーザの不満がさらに高まっているようだ。個人的には他のSNSも含めてTwitterもあまり見ることがないので、この不満の程度がわからないが、相当問題視されているようだ。
メタの動きは、このTwitterユーザの不満に乗じて、Twitterの占めているソーシャルメディアの地位を奪おうとしているのだろう。メタはメタで多くの問題を抱えている。スマホのプライバシーポリシー変更により広告ビジネスに大きな影響が出ているし、Facebookは高齢化と成長の鈍化により将来がよく見えない。長期的な成長分野として、メタバースに多くのリソースを投じてきたが、その結果が現れず、メタバースについて懐疑的な意見も出始めているようだ。そのためにメタバース分野の投資は大幅に削減されている。
さらに、この半年ほどの生成AIツールのブームで、メタはAIの領域で出遅れたと考えられるようになってしまった。実際にメタは早くからAIを研究し、様々なツールを開発したが、現時点まではでは公開に至っていない。
そのような苦境を打開するためのTwitterキラーなのかもしれない。イーロン・マスクの買収以来、Twitterの競合として、Twitter創業者のジャック同士が立ち上げたBlue SkyやTwitterと同様の機能を持つTumblr、Nostr、Spill、MastodonがTwitterの代替と考えられたが、どこも成功していない。多くの問題があるにせよ、Twitterから多くの人が、それらの競合アプリに流れたと言う話を聞かない。
しかし、今回メタがTwitterキラーを導入すると、Instagramのユーザへのプロモーションや様々な連動する機能を加えることにより、他のTwitterの競合よりも、はるかに手強い敵となる可能性がある。Instagramの月間アクティブのアカウントは10億を超えており毎日のアクティブのユーザ数は5億人と発表されている。日本国内の月間アクティブ・ユーザ数は3,300万人と発表されている。
ちょうど総務省が「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」を発表したばかりだ。この報告書によれば、Twitterの成長率は横ばいとなったが、それでも全年代で45.3%の利用率であり、特に20代では78.8%と高い利用率となっている。しかし、Instagramの利用率は更に高い。全年代では50.1%と、Twitterよりも高い利用率を持つ。このユーザをThreadsにつなげることができれば、Twitterにとっては大きな脅威となる。
イーロン・マスクのTwitterの経営方針はあまりはっきりしない。明らかにユーザの不満が高まるようなことばかり行っているように見える。認証プロセスの変更や有料化への誘導を見る限り、広告モデルから有料課金モデルの転換を試みているのかもしれない。閲覧数の制限等は、サーバーの負荷を抑えるためにコスト削減と言う目的があるのか、そこもはっきりしていない。ただ言える事は、Twitterのユーザに不満が溜まりに溜まっていることだ。そこに現状のビジネスで行き詰まっているメタが付け込むことができるのかどうか。今までのTwitterの競合アプリに比べるとThreadsはメタと言うユーザベースとリソースを持つ企業がバックにいることにより、比べ物にならない強敵が現れたと言える。
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